子どもへの性被害生む児童ポルノという引き金

「個人のお楽しみ」で片づけていい話ではない

「現実とファンタジーの区別はついている。児童ポルノを見ても、実際の子どもに手をかけるなんてことはない」というのは、典型的な認知の歪みの1つです。自身が子どもに加害行為をしていなくても、それに加担している事実にふたをしています。

また、当院のデータでは加害経験がある者のほぼ100%がなんらかの児童ポルノを見ているという事実があります。

2017年、国内最大規模の児童ポルノ販売サイトを警視庁などが摘発し、同サイトからDVDを購入し、所持したとして、児童ポルノ禁止法違反(単純所持)の疑いで約870人が書類送検されました。捜査の過程で一部の容疑者が子どもに性加害をした疑いが判明し、そのうち少なくとも約20人が強制わいせつなどの疑いで逮捕されたという報道がありました。

870人の20人、全体の約2%ですから、この数字だけ見るとごく一部の対象者の問題だと感じられるかもしれません。しかし、加害者1人につき被害者が1人とは限りません。

私が、とある地方の刑務所で性犯罪で服役している受刑者の前で講話をしたときのことです。私はアメリカの研究者エイブルによる「1人の性犯罪者が生涯に出す被害者の数は、平均380人である」という研究を彼らに紹介しました。

その中には子どもへの性加害を繰り返していた男性が何人かいましたが、次のように答えたのです。

「380人ですか……僕はその3倍はしていると思います」

ほかの小児性加害者たちも、大きくうなずいていました。

警察当局は先の摘発について、「子どもを狙った性犯罪の入り口になっている」と見解を発表していますが、これは児童ポルノをめぐる問題の本質をずばり言い当てています。

児童ポルノは子どもへの性嗜好に気づくきっかけ

小児性愛障害と診断された者たちは、生まれながらにして子どもへの性嗜好を持っていたわけではなく、社会の中でそれを学習し、身に付け、強化していきます。児童ポルノはその「パンドラの箱」を開けるきっかけとなっている可能性がとても高いといえます。

もしこの社会に児童ポルノがなかったら――そんな“たられば”を言ってもしょうがないですが、子どもへの性嗜好に気づいたきっかけが児童ポルノとの出合いだったというのは、小児性犯罪の治療グループで聞かれる定番中の定番のエピソードです。

そして児童ポルノを通して彼らは「子どもは性的な存在である」というメッセージを受け取り、認知を歪めていきます。見れば見るほど、それを利用してマスターベーションを繰り返せば繰り返すほど、問題行動は強化されていきます。

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