子どもへの性被害生む児童ポルノという引き金

「個人のお楽しみ」で片づけていい話ではない

被写体となっている子どもは、そう見られることを嫌がっているような顔はしていないでしょう。歪んだ認知でもって見れば、むしろ喜んでいると受け取れる笑顔を向け、自ら積極的に扇情的な振る舞いをしているように見えるはずです。そうやって彼らの認知は、ますます歪んでいきます。

「児童ポルノがあるから現実の子どもにいかなくて済んでいる。なければ、子どもへの性犯罪はもっと増えると思うよ」というのは、まったく逆です。児童ポルノに触発されて実際の子どもに加害行為をする者もいる、と考えるほうが現実的ですし、そのように語る加害者に私は何人も会ってきました。

加害行為をする前には、トリガー(引き金)があります。クリニックに通院する者たちに「加害行為の前に何をしていたか、どんな状態かだったか」を振り返ってもらうと、子どもとのセックスを想起し過剰なまでにマスターベーションをしたというエピソードがよく出てきます。1日に8回もしていたという者もいました。言うまでもなく、そのときには児童ポルノがセットになっています。児童ポルノは確実にトリガーとなりうるものなのです。

児童ポルノに出合わなくとも、なんらかのきっかけで彼らが子どもへの性的関心を抱くようになった可能性はあります。けれど児童ポルノに出合わなければ、それが強化され認知が歪むプロセスをどこかで食い止められた可能性は無視できません。

児童ポルノと表現の自由について議論するときは、常にその背景に被害を受けている子どもがいることを忘れてはなりません。これを加害者臨床では「ダブルクライエント構造」と呼んでいます。

“被害者のいない児童ポルノ”

これに対しての反論に「“被害者のいない児童ポルノ”もある」というものがあります。「漫画やアニメ、CGを利用して作成された“子どもにしか見えない”人物の描写」のことです。それらは現実の子どもを傷つけておらず、ただ個人で楽しむことを目的に作られたものなので、規制はそのまま「表現の自由」への侵害になるという主張です。

実在しない架空の子ども、非実在の子どもが描かれる児童ポルノは、確かに直接的には被害者を生んでいません。視覚に訴えず文章だけで記された、小説のようなポルノもこれに該当するでしょう。

日本では、どう見ても子どもにしか見えない人物が登場する、成人向けの漫画やアニメ、ゲームなどが多数、流通しています。同人誌など個人が直接販売するものも含めると、数えきれないほどになるはずです。

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