子どもへの性被害生む児童ポルノという引き金 「個人のお楽しみ」で片づけていい話ではない

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児童ポルノ禁止法が2014年に見直される前にも、この問題は大きな争点となりましたが、漫画やアニメ、CGによる子どもの描写を児童ポルノとしてその製造や運搬、提供、陳列、単純所持を処罰の対象としようという改正案は見送られました。

しかし、加害者臨床の現場で接する小児性愛障害者らが、実在する子どもと、そうでない架空の子どもとを明確に区別しながら児童ポルノを利用していたとは感じられません。

ここで議論されているものとは少しずれますが、アダルトビデオなどでは18歳以上の女性を出演させ、明らかにそれ以下の子どもを演じさせます。服装やメイクによっては、10代前半といわれても何ら違和感がないといいます。

実際には18歳以上ですからそのようなメディアに出演すること自体は法に触れません。しかし見る側は、そこに“子ども”を見ます。中には本当の子どもでないと興奮できないという者もいますが、大抵は“子どもに見える”のであれば、それをリソースとして空想を広げることは十分可能のようです。

漫画やゲームでも明らかに子どもの姿態を描いていながら、その登場人物の年齢を18歳以上に設定するという手法は、よく採用されているようです。

実際は18歳以上でも、認知に影響を及ぼす可能性は高い

いずれも現在の法律では、「現実の子どもが被害に遭っているわけではないから問題ない」とされてしまいますが、やはり大なり小なり見る者の認知に影響を与える可能性が高いといわざるをえません。

『「小児性愛」という病~それは、愛ではない』(ブックマン社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

特に漫画やアニメ、ゲームなどでは子どもの身体の一部が大きくデフォルメされ現実離れしたものになっていたり、行為の内容も過激になっていたりと、極端になりがちです。繰り返し見れば無意識のうちに刷り込まれ、大なり小なり認知構造に影響を及ぼす可能性は高いです。

「現実とファンタジーの区別はつく」――児童ポルノを愛好する人たちの常套句ではありますが、はたしてそうでしょうか?

児童ポルノを愛好するほとんどの人が現実とファンタジーの区別がついていても、その中から1人でも現実に加害をする者が出てくれば、それは対策が必要だということです。小児性犯罪は特にその傾向が強いということが、世界でも明らかにされつつあります。

子ども(にしか見えない者)を性的対象としていい、性行為をしていいという認知を持つ者が少なからずいる社会は、子どもにとって安全に生きられる社会ではありません。この認識が広く浸透していくことが、子どもへの性暴力を抑止することにもつながります。

斉藤 章佳 大森榎本クリニック 精神保健福祉部長

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さいとう あきよし / Akiyoshi Saito

1979年生まれ。精神保健福祉士・社会福祉士。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、約20年にわたってアルコールを中心にギャンブル、薬物、摂食障害、クレプトマニア、DVそして性犯罪などのさまざまなアディクション問題にかかわる。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動に取り組んでいる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(ともにイースト・プレス)などがある。

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