「不妊治療の裏側」を25年見てきた人が語る真実 意外と知らない、適切な医師や病院の選び方

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――セローノという会社に入ったおかげで、不妊治療の専門医たちとの強力な結び付きができたんですね。

セローノで4年働いた後はいろいろ新しい分野にチャレンジさせてもらえそうな製薬会社のファルマシア(現・ファイザー)に転じました。

一方で、私は個人的にインターネットにも興味があり、仕事でお付き合いのあった先生方からクリニックのサイト制作を依頼されることが多くありました。そうして、ドクターたちのアドバイスとサポートで2000年に法人を立ち上げ、今に至ります。

ネットサポートだけではなく、先生から「今、現場ではこんなことで困っている」と言われたら、できるかぎり調べてご対応しなければなりません。

次第にサイトを作るだけでなく、患者さんの集め方、満足度の向上、スタッフの採用と研修まで、勉強しながら問題を解決してきました。最初は関西中心の仕事だったのですが、口コミで広がり、大変光栄なことに「(病院経営で)困ったことがあったら池上を呼べ」と言っていただいたこともあります。

人間は妊娠しにくい動物

――そんな池上さんにズバリお聞きします。不妊治療で子どもを作るために適切な医師や病院を見分ける方法はありますか?

私は今まで数千人の医師の方と関わってきましたが、実にいろんなタイプの方がいます。腕がいいけれどコミュニケーションが不得手な人、口はうまいけれど腕はそこまでではない方、などなどです。

患者さんにお勧めしたいのは、自分が伝えたいことをちゃんと聞いてもらっているかどうかを確認することです。必ずしも医師が聞いてくれなくてもいいのです。看護師や院内スタッフが患者のニーズをしっかり把握して治療方針を決める環境を整えているクリニックは、より少ないストレスで治療を進めていけると思います。

妊娠をサポートする力(生殖補助技術を含む)について高い技術力を持っているかどうかは、最も重要です。不妊治療には大きく2種類あります。一般不妊治療と高度生殖医療です。前者は不妊治療を専門にしていない婦人科や産婦人科などでも行っていて、タイミング法や薬物療法などでの妊娠を目指します。

産婦人科・不妊専門病院に特化したコンサルティング会社・メディエンスを経営している池上文尋さん(写真:尾形文繁)

30歳未満の場合は医師が(セックスの)タイミングなどを口頭で指導するだけで妊娠することもあるので、「妊娠しやすい年齢と体調の人は妊娠できる」ともいえます。

一般不妊治療を行っている施設での治療に通って、半年間妊娠しなければ不妊専門クリニックに転院することは一つの手だと思います。一般不妊治療施設で妊娠しないのに2~3年も通う患者さんも少なくありませんので。

25歳から35歳までの患者を対象とした不妊治療の場合、成績を誇る不妊専門クリニックでも妊娠率は30~40%です。意外と低いですよね。男女ともに若くてベストな状態でも1回で妊娠する確率は25%程度といわれています。人間は妊娠しにくい動物なのです。なお、40歳以上の女性が不妊治療に成功する確率はわずか数%です。

そのため、晩婚さんが不妊治療を受ける場合は、一般不妊治療はもちろんのこと、人工授精、体外受精、顕微授精ができる後者の高度生殖医療をちゃんと行っている不妊専門クリニックを最初から選ぶのが現実的です。

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