「不妊治療の裏側」を25年見てきた人が語る真実 意外と知らない、適切な医師や病院の選び方

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――どんなに優れた病院を選んだとしても、40歳以上の女性が妊娠・出産できる確率は高くはありません。何かいい方法があれば教えてください。

不妊にはいろいろな原因があり、精子や子宮に問題があるケースもあります。しかし、圧倒的に多い不妊原因は卵子の減少と老化です。

40歳以上になると妊娠の確率はかなり低いものになります。不妊治療における助成金が42歳までなのは、治療を施しても妊娠・出産の確率が低いことが理由です。

最近、40代以上の患者さんが妊娠したいがために長期間治療を続けて、多額のお金を使い、妊娠に至らないばかりか、逆に体調までおかしくなることが社会問題になりつつあります。日本だけではなく、海外メディアでもその面について報道がなされています。

今後、それを解決する一つの方法として注目を浴びているのが卵子提供です。若い女性から提供してもらった卵子を夫の精子と体外受精し、自分の子宮で育てて出産する技術で、1回の妊娠率は70~80%といわれています。健康であれば50歳でも出産可能です。

もちろん、母親にとっては自分の卵子ではないので、遺伝子的には他人です。しかし、自分の子宮で育てること、それから卵子のDNAのどのスイッチが入るのかは母体の影響を強く受けるといわれていることからまったくの他人ではなく、「究極の育ての親」ともいえるのではないかと私個人は考えています。

卵子提供は海外では一般化しつつあります。とくに日本人の治療例が多いのは台湾、ハワイ、カリフォルニアです。現在、日本の法律では認可も禁止もされていませんが、卵子提供による体外受精を続けているクリニックは存在します。今後、実績ある海外の医療機関と提携し、卵子提供を治療の選択肢として推奨する医療機関が増えていくかもしれません。

納得できる医療機関を選ぶことの重要性

婚活と妊活には大きな違いがある。婚活は結婚相手を探しているようで、実は自己理解の過程であることが多い。条件面でいい相手を見つけても、自分にふさわしくなければもし結婚しても生活は破綻してしまう。自分はどのような人間で、どんなときに居心地のよさを感じて力を発揮できるのか。さまざまな経験を通して知ることが肝要だ。心理学的な活動といえる。
一方の妊活は自然科学の要素が強い。自分の年齢や体質を客観的に把握しつつ、優れた技術と設備を備えた医療機関を選ぶことができるか否かが運命の分かれ目となる。利用者のニーズをちゃんと聞いて、一般不妊治療から高度生殖医療までの幅広い選択のうちから適切な治療方針を提示してくれることが大前提だ。
高度生殖医療に限って言えば日本で本格化して20年足らずの新しい医療分野である。それだけに治療の水準に大きな差がある。池上さんの推薦図書は『不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」』(ブルーバックス)だが、不妊治療のデータを基に科学的に解説した本はほかにもいろいろあると思う。CMや口コミだけを信じることなく、勉強したうえで自分が納得できる医療機関を選んでほしい。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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