本連載の出演申し込みフォームにこんなメッセージが入ったのは今年9月のことだ。簡潔で感じのいい文面であるが、筆者はとりわけ気に留めていなかった。しかし、担当編集者のYさんが「組合」というワードに注目。古めかしい組織と思う人もいるかもしれないが、つながり作りには意外と便利かも、と感じたらしい。
そういえば、筆者の知人(老舗出版社勤務)も一緒に社内の組合活動をしていた女性と結婚した。同じ会社という強力な共通点はありつつ、業務外の課題に取り組む過程でお互いの人間性を知ることができたのだろう。組合婚、いいかもしれない。
仕事に夢中で恋愛に発展することがなかった由里さん
東京・西新宿の高層ビル内にある土佐料理の店に来てくれたのは、メッセージをくれた上村由里さん(仮名、38歳)。ダンガリーシャツにざっくりしたグレーのニットを合わせて、大きなオシャレ眼鏡をしている。快活で若々しい印象を受ける女性だ。現在の大手IT企業に就職したのは7年前で、それまでは長く居酒屋で働いていたという。
「高校を卒業してからずっと同じ店で働いていました。朝まで営業している居酒屋です。常連客からお酒をいただいたり、仕事が終わった後にスタッフ同士で飲みに行ったり。365日、飲んでいました。仕事はすごく楽しかったので体力が続けば永遠に続けたかったのですが、生活が不規則すぎて体を壊してしまったんです」
仕事に夢中で、男友達はいたけれど恋愛に発展することはなかったと振り返る由里さん。お店を泣く泣く辞めた後、ハローワークを通じて規則正しく休みが取れるデスクワークの仕事を探した。その1年後、もともと不仲で別居していた両親が離婚。母親と由里さんの楽しい2人暮らしになったが、母親からはしだいに結婚を急かされるようになった。
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