トランプが2020年大統領選で優勢と読む理由 接戦になりそうだが結局は経済が物を言う?

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ドナルド・トランプ政権が繰り出している中国経済を抑圧するための保護主義政策は、当然自国経済にも痛みをもたらす。ただ、これは金融財政双方のマクロ安定化政策を徹底することで持続可能になる。この中でも、2020年は、FRBの金融政策が総需要を刺激する可能性が高いとみられる。政策金利は2019年7月から合計3回(累計0.75%)の引き下げとなり、FRBは当面政策金利について据え置く姿勢を明らかにしている。

一方、8月まで削減していたFRBのバランスシート政策は9月から拡大方向に転じ、さらに短期金融市場を安定させるために10月に大規模な短期国債買入れを行った。こうした一連の政策対応に関して、FRB自身は「量的金融緩和政策ではない」と説明している。ただ、最近の対応やアナウンスを踏まえると、2018年から削減してきたバランスシートは2019年半ばから反転し、今後2023年にかけて、既往の最高水準を取り戻す格好で増え続けると筆者はみている。

FRBは2018年に政策金利を引き上げ過ぎたが、それを取り戻すために異例の判断で素早く利下げに転じた。さらに、利上げと同時に進めてきたバランスシート削減ペースが早すぎたこともあり9月までは金融市場への流動性が不足気味となっていたが、10月にはそうした状況を一変させるため大幅な国債買入拡大を始めた、と言うことだろう。

財政政策については、追加の減税政策などが実現しなければ、減税、歳出拡大の成長押し上げ効果は、2020年後半からはやや衰えると見込む。ただ、共に成長率を高める金融財政政策を使いながら、潜在的な覇権国として意識せざるを得ない中国へ圧力を高めるトランプ政権の政策は、戦略的に実行されていると言える。

トランプ大統領は中国封じ込めと経済成長の双方を追求

2020年の最大のテーマはアメリカの大統領選挙だが、対峙する民主党の候補者は2020年3月頃までの予備選挙などを経て決まる見通しである。有力候補は絞られつつあるが、だれが大統領候補者になるかはかなり流動的で現時点で展望することは難しい。メインシナリオでも生起可能性は50%以下となるが、敢えて言えば最近一時の勢いが衰えているが、左派勢力の支援を得ているエリザベス・ウォーレン氏が民主党の大統領候補になる。

実際にトランプ大統領が再選されるかは、ライバル候補が誰かに依存するが、いずれの候補者となっても大統領選挙は接戦になると見込まれる。そして、大統領選挙が戦われる中で、「中国封じ込め」プラス「経済成長の底上げ」の双方を追求するトランプ政権の対応が実を結ぶというのが、筆者の考えている2020年のアメリカ経済のシナリオである。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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