年間20万人が孤立死。家族難民があふれる日 山田昌弘氏(中央大学文学部教授)に聞く

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──パラサイト・シングルたちはどうなっていますか。

年を経て、彼らも持ち上がって中年化している。ボリュームゾーンは30代から40代になり出している。彼らも同居の親が亡くなったら、そのまま孤立してしまう。兄弟姉妹がいても音さたがあるかどうかという具合で、関係は薄くなっているし。

親が「壊れて」、子どもを支え切れない家庭も増えている。それは貧困の連鎖となり、一人親や親自身が非正規雇用である場合、そこでは子どもは豊かな中高年時代を送れなくなる。家族格差がてきめんに響く。

──家族格差?

従来どおりの家族生活を送る人と、そこから外れる人。それも経済的な強者は家族的な強者にもなる。いろいろな意味で、経済的な弱者は家族的な弱者になる。経済格差によって家族格差にレバレッジがかかるのだ。たとえば、正社員同士の夫婦と非正社員同士の夫婦では、その差は大きいと指摘する人もいる。

正社員は結婚でき、自分を心配してくれる人がいる。非正社員で結婚できなかった人は、高齢になったときも経済的に苦しい。自分を助けてくれる家族もいないとなれば、心理的にも誰も助けてくれない心境に陥りがちになる。

──性格から見てシングルになりやすい人はいるのですか。

結局、自由化された社会だから、どうなるかは経済的能力とコミュニケーション能力、この二つの組み合わせで決まる。結婚にも就職にも、この二つの能力がかかわっている。たとえシングルでも、経済的な能力やコミュニケーション能力に魅力があれば、頼れる友達づくりは自然とできる。

今、起きているのは、その能力のない人がどんどん生まれているということだ。親と同居し、半分引きこもり。あるいは非正社員で会社でも会話をしないで過ごす。この人たちは親が亡くなると、自分を助けてくれる人をつくる能力がないから苦境に立たされる。

──パラサイト・シングルという指摘は将来への警鐘だった……。

10年ほど前から、中高年パラサイト・シングルが増えてきているから、その対策をしないといけないと口を酸っぱくして言ってきた。今すぐの問題ではないと軽視されたが、人口学的に言って、20年後にはそういう人たちがはっきりと姿を現し、日本社会を分断して困った状況になる。

今のうちに、むしろ高齢者にでなく、若い層向けに対策を講ずるべきだ。自分を必要とし大切にしてくれる存在づくりの対策だ。婚活予算もとうとう削られてしまった。比較的恵まれている今の日本の高齢者より、次世代を担う若者について考え、施策を打つべきなのだ。

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