トランプ大統領は米中合意後、再び中国を叩く?

実は株価を上げることには固執していない

というのも、今回の部分合意については、前回のコラムでも書いた通り、
不可解な部分があるからだ。つまり、中国側としては、ある程度アメリカ産農産品の購入を増やすが、数値目標としてはトランプ大統領の要望より遅い増加スピードに設定するか、できれば数値目標自体を示したくないというものだ。

また農産品購入以外については、ほとんどお題目程度の内容で済ませたい、それでもアメリカ側には関税撤回をできるだけ行なってもらいたいというもので、中国のいいなり、アメリカの大幅譲歩、としか考えられない内容だからだ。つい数か月前まで、政権内の対中強硬派に沿った、関税の対象範囲拡大を続けてきた大統領が、なぜコロッと軟弱姿勢に転じたのか、その背景要因は何かが気になったからだ。

トランプ大統領は株価と再選を結びつけていない?

日本国内では、「2020年の大統領選挙に向けて、トランプ大統領はさまざまな経済対策を打ち出し、景気と株価を押し上げ続けたいはずだ。そうした考えの中で、アメリカの景気に大いに配慮して、今回の部分合意を推し進めている」との声を多く聞く。そこでアメリカでの取材先に、「日本ではそうした意見があるが」と水を向けると、取材先の最初の反応は「お前が何を言っているのかわからない」と、ハトが豆鉄砲をくらったような表情だった。

「確かにトランプ大統領は、景気がそこそこ好調で、株価がそれなりに堅調な方がいい、とは思っているだろうが、景気と株価を押し上げ続けなければ当選できない、などとは全く考えていないだろう」という意見が圧倒的だった。

さらにその場で指摘を受けたが、過去、再選に成功した大統領と失敗した大統領について、選挙前の経済成長率がどうだったかをみると、再選の成否と経済成長には明確な関係が見出しにくい。確かに1980年に、ジミー・カーター大統領が再選に失敗した際は、実質経済成長率(前期比年率ベース、以下も同じ)は同年4~6月、7~9月はマイナスだった。しかし、1984年のロナルド・レーガン大統領(同年1~3月8.1%→4~6月7.1%→7~9月3.9%)や2012年のバラク・オバマ大統領(同3.2%→1.7%→0.5%)は、景気の減速色が強まるなかで再選されている。

「今は、確かに製造業の減速色は鮮明だが、有権者が気にする雇用情勢は強いし、株価も最高値圏だ。そのなかで景気や株価への配慮が、今回の部分合意についても、今後の経済政策についても、大統領が考慮する大きな要因とは全く考え難い」と突き放された。

では、なぜ今は大統領が部分合意にまい進しているかというと、「農家に対していい顔をしたいからだろ」とひとことで済まされた。アメリカの農家数は、5年ごとに行われる農業調査では204万軒(2017年)に過ぎず、大きな票田とは言い難い。しかしすべての州に農家は存在しており、また農業を支えるという姿勢が非農家層にも歓迎される傾向があるため、農家を支援するポーズをとることは、選挙戦略上は重要だとの声を多く聞いた。

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