赤字のソフトバンクが宿す「WeWork」3つの懸念 孫社長の「誤差発言」多用がどうも気になる

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WeWorkのIPO(新規株式公開)延期でソフトバンクグループの対応に注目が集まっていた中で10月23日、ソフトバンクグループは最大で95.5億ドルの「大規模な資金コミットメント」、さらにはソフトバンクグループCOOマルセロ・クラウレの取締役会エグゼクティブ・チェアマンへの選任といったWeWorkへの追加支援策を発表しました。

資金コミットメントの内訳は、TOB(株式公開買い付け)による株式取得で最大30億ドル、担保付きシニア債券11億ドル、無担保債券(ワラント取得)22億ドル、レターオブクレジットファシリティー17.5億ドル、既存コミット分の株式取得15億ドルとなっています。

孫社長は、これを、「救済ではなく、現金が流出することのない株式価値の洗い替え」「投資した株主価値が高すぎたので、現金を流出させることなく株式を安く仕入れた形へ株価の洗い替えをした」「WeWorkへの今回の投資はナンピン買い」と強調しています。実際にソフトバンクグループによるWeWork株式の取得価額は、2019年1月時点の110.0ドル/株から追加支援を経た変更後11.6ドル/株になっています。

「WeWork問題」はP/Lの問題?

WeWorkの2018年売上高は約18億ドル(前年比105%増)で、2019年に至っては上期6カ月間だけですでに約15億ドルの売上高をあげています。しかし、営業損益では2018年は約17億ドルの赤字、2019年上期は約14億ドルの赤字となっています。この赤字体質がIPO延期の理由の1つです。

孫社長は、WeWorkの収益モデルを「粗利-経費=EBITDA」と表しました。EBITDAとは、税引き前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加算して算出される利益で、収益力を示す指標の1つでもあります。

そして、現在のWeWorkは「低い粗利-高い経費=赤字のEBITDA」になっているとし、この構造を改善することでEBITDAは伸びると述べています。また、ソフトバンクグループはWeWorkのすべての不動産物件の価値やリスクなどを調査するデューデリジェンスを行った結果、物件の稼働率が伸びていくことで開業後6カ月を過ぎると収益を生み、12カ月を過ぎると高収益に転じると判断。

WeWorkの新規スペース増加を一時停止すること、経費削減、不採算事業の整理という施策を講じるとしています。つまり、WeWorkの採算は「時間とともに改善」され、高収益へと「V字回復」するというストーリーを提示したのです。

では、「WeWork問題」の本質とは何なのでしょうか。私はそれを次の3点と見ています。

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