富士フイルム「ゼロックス断念」でも満足のわけ 「富士ゼロックス」子会社化後の成長戦略

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一方で「マストではないがベターだ」としてきたゼロックスの買収については「もう考えない」(古森会長)と明言。複合機の開発は富士ゼロックスが主に担っているとされており、富士ゼロックスからゼロックスへの製品供給は継続される。

ただ、富士ゼロックスはゼロックスブランドの使用や販売地域に関する技術契約を締結しており、この契約が2021年に期限切れになることから、ゼロックスと中長期的に関係を維持できるかどうか不透明感が残る。

日本やアジア以外への進出も可能に

ゼロックスのジョン・ビセンティンCEOは「今回の合意は富士フイルムとの関係をリセットし、両社に大きな成長の機会をもたらす」とコメントしている。

また富士ゼロックスは、ゼロックス以外にも世界でOEM供給を拡大することも発表。これまでゼロックスとの契約があって販売できなかった日本やアジア以外に富士ゼロックスが進出できることになり、古森氏は「世界市場を狙って成長していきたい」と意気込みを語る。このことは長期的にみてゼロックスの経営に影響しかねない。

今回の富士ゼロックスの完全子会社化について、富士フイルムHDの樋口昌之・経営企画部長は「交渉中に完全子会社化の話が出てきた」と説明するのみで、どちらからの提案かは明らかにしなかった。古森会長は「ゼロックスにとっては(富士ゼロックス株が)買収されることによってキャッシュが入るということが重要ではないか」とした。

ひとまずの決着をみた世界的な複合機業界の再編劇だが、富士ゼロックスの経営の自由度を手に入れた富士フイルムにとって有利な内容と言える。一方、ゼロックスは25%分の株式売却で一時的に潤うが、富士ゼロックスの経営に関与する権利を失う。両社のどちらが得をしたのか。数年後にはその帰趨が明らかになるかもしれない。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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