富士フイルム「ゼロックス断念」でも満足のわけ 「富士ゼロックス」子会社化後の成長戦略

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利益率が向上しているのは、低採算の製品を減らし、ITサービスや業務効率化に寄与する高付加価値の複合機に力を入れているからだ。古森会長は「ドキュメント事業を成熟産業と捉える見方もあるが、私はそうは思わない」として、IT分野などでの技術開発を続けることで複合機事業の成長余地はまだあるとみる。

競合他社も複合機事業の改革を急いでいる。リコーは4月中旬に開いた投資家向け説明会で、ITサービスを強化して事務機などハードウェアの売上依存を減らしていく方針を説明。コニカミノルタも、ITサービスと複合機が一体化したプラットフォーム製品「ワークプレイスハブ」を展開している。

医療分野でのシナジー効果に期待

富士フイルムが複合機業界で勝ち残るためには、富士ゼロックスの完全子会社化は不可欠だったといえる。「ゼロックスが株を保有していたときはなんでも相談する必要があり、経営スピードに影響があった」と古森会長は振り返る。今回の完全子会社化によって富士ゼロックスの改革を一層加速することができる。

古森会長と会見に臨む富士フイルムHDの助野健児社長(右)。今回の完全子会社化を「ベストな選択」と評価した(撮影:尾形文繁)

富士フイルムHDの助野健児社長は、今回の完全子会社化を「ベストな選択である」と評する。とくに期待を寄せるのが、富士フイルムと富士ゼロックスのシナジー効果。5日の会見ではクラウドやAIの活用などを示したが、とくに熱を込めて語られたのは医療分野への展開だ。

内視鏡やX線画像診断などを展開する富士フイルムの画像処理技術と事務機器で培ってきた富士ゼロックスの言語処理技術を応用し、医療機関内で使われる書類作成を補助する製品などを考えている。

こうした新しい領域の強化によって、現在、売り上げが縮小傾向にあるドキュメント事業で2025年3月期までに売上高を2019年3月期の約1.3倍となる1兆3000億円、営業利益も500億円以上増加させる算段だ。

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