谷中、立石、西荻窪…「ザ昭和」の街が消えるワケ 再開発でタワマンができればいいのか

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懸念自体はわかる。だが、その内容に地元では反発する声が少なくない。最も多いのは、路地にある住宅地でも規制緩和が行われ、道路に面して高さ9m(3階建て)の建物が建てられるようになり、もう少し道路から離れれば、高さ12mまでの建物の建設が可能になる点だ。

これまでは道路沿いでは2階建て(後退部分については3階建て)までしか建てられなかったところに、道路沿いに垂直に3階建てが建てられるようになるのだ。圧迫感は大きい。こうした中、「谷中から路地が、広い空が失われる」「低層の集合住宅が増えることで街の風情、暮らしが失われる」という懸念の声が挙がっている。

「地元の人」は蚊帳の外

2018年7月以降数回にわたって説明会が行われているが、それは主に土地所有者に対してである。谷中では土地所有者と居住者、利用者が異なることが多く、街がどう変わろうとしているのかを、地元の人たちが知る機会は少ない。

土地所有者や、公的に意見を言える場を与えられている高齢の顔役だけが今の谷中の隆盛を作り上げてきたわけではないと考えると、街の将来を考えるうえでは広く意見を聞くべき余地があるのではなかろうか。

西荻窪で起きている再開発騒動も道路拡幅がきっかけだ。青梅街道から中央線西荻窪駅の脇を通過する北銀座通り(都市計画道路補助132号線)の拡幅計画が2016年、52年ぶりに具体化に向けて動き出したのである。現状11mの道路が16mになり、駅以南はさらに広い20mになる予定で15年ほどかけて工事を行うという。

となると、引っかかるのが北銀座通りと並行する、ピンクの象がぶら下がったアーケードで有名な「西荻南口仲通街」である。通りとの間は数メートルしかないため、拡幅が行われると商店街の片側が半分ほどになり、存続は難しかろう。

商店街に隣接する飲食店街も建物は老朽化している。これはチャンスと踏んだ人たちが入ってきて暗躍し始めたことをきっかけに、再開発がどうの、16階建てでどうのと、さまざまな噂が飛び交う状況に発展。西荻らしさを潰すなと反対する人も多く、大騒ぎになった。

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