谷中、立石、西荻窪…「ザ昭和」の街が消えるワケ 再開発でタワマンができればいいのか

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同じ資料などからデベロッパー、葛飾区がそれぞれ取得する床の㎡単価を計算すると、それぞれ48万円、80万円(西棟、東棟と分けて共用部を含んだグロス価格で計算)になるという。さすがにそこまでの差が出るのはおかしいと思うが、残念ながら遠藤氏が入手した資料以外には材料がない。

準備組合のホームページでは数字は一切公開されていない。そもそも民間主導の再開発では、組合が設立されるまでは情報を公開する義務がないからだ。設立後ですら短期間しか公開しないケースが多く、地権者以外は内実を知るチャンスはない。民間の事業ながら、多額の税金が投入されるのであれば地権者以外に情報が公開されないまま進められるのは解せない。

千葉のある駅では3棟のタワマン計画が

そもそも、開発が秘密裏に進められ、突然公開されるのも、民間の事業だからという理由がある。最近、話題に上がっている開発では千代田区二番町の日テレ通り、北区十条駅西口、足立区北千住駅東口、豊島区南池袋二丁目、杉並区阿佐ヶ谷駅北東地区、川崎市鷺沼駅前など挙げ始めると実に多いのだが、それ以外でも水面下で動いているらしい開発もある。

例えば千葉県のある駅前には45階を含む3棟のタワーマンションの計画があるというが、これからの時代にそれだけの住宅がその立地で売れるのか。税金を投入する価値があるのか。検証する時間もないまま、組合が設立されてしまえば打つ手はない。

最近では東京都羽村市が進める羽村駅西口土地区画整理事業を反対住民が訴え、取り消し判決が出た事例がある。これは市の歳入規模からみて非現実的で、事業計画も進捗状況からかけ離れて実現不能と数字から判断されたためだ

数字が公開されていない場合、そうした判断はできない。削減が進められている福祉や教育その他分野に比べ、再開発はずいぶん優遇されているようであり、それがあちこちにクレーンを見かける要因というわけだ。

ところで、この原稿を書いていて思い出したことがある。かつて武蔵小山の再開発を書いたとき、京成立石と完成予想図がそっくりだという声を何人もから聞いた。品川区のテレビ頻出の商店街と葛飾区の猥雑な活気が楽しい飲食店街の最終形がうり二つとは。さすがに実際にはもっとその土地らしいものになるのではないかと思うが、いやあ、悪い冗談のようである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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