万年筆のプロ「ペンドクター」を知っていますか

国内にたった十数人と少なく、初の女性

ペンを修理するペンドクターの宍倉さん。ルーペを使用してペン先の細かなところまで注意深く見つめる(撮影:与儀達久)
おろしたてで書きづらいペン、 落としてしまった愛用のペン、祖父母から受け継いだペン――。
筆記具を蘇らせてくれるプロを訪ねる。

意識せず、 気持ちよく使えることがすべて

「書き出しがかすれるのですが」と差し出された万年筆を受け取り、ペン先を紙に落とした瞬間に「『iroshizuku―色彩雫―』(パイロット万年筆)の『yama-guri(山栗)』ですか?」とインクの銘柄・色名をぴたりと当てた宍倉さん。

驚いているこちらをよそに、ルーペを覗き「ペン先が少し引っかかるみたいですね」と何種類かのサンドペーパーを当てる。1、2分で返されたペンを使ってみると、書き味が一変なめらかになっていて、また驚く。

続いてもう1本のカートリッジ式万年筆を手に取ると「わあ、ずいぶん使ってなかったんですね」と苦笑い。手早くペン先を外してコップの水につけ、古いインクを洗い流してくれる。もともとあまりインクの出がよくなく、紙に押しつけて書いていたせいで、ペン先もズレていたのだそう。ズレを直し、スリットに薄い調整器具を差し込んで、インクがスムーズに出るよう調整していく。

本記事は『東京人』2019年12月号(11月2日発売)より一部を編集して転載しています(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

「未開封でも、インクは揮発して濃縮されてしまいます。ほら、ゆうべカートリッジを取り替えたばかりとおっしゃるのに、こんなに減っていたでしょ。カートリッジもボトルも、3年を目安に買い換えてくださいね。ボトルは、開封したら2年から2年半。インターネット通販では製造年の古い商品が届いたりもするので、よく売れているお店で購入するのがおすすめです」

ペンクリニックとは、万年筆メーカーと関連会社数社により、全国の百貨店や文具店を会場に不定期で開催される無料のイベントで、主催企業所属のペンドクターたちが書き心地を調整してくれる。国内外筆記具の卸・販売を手がけるサンライズ貿易に所属する宍倉さんは、各社の特色を中立的・俯瞰的に見られるのが強み。国内にたった十数人と少ないペンドクターの中で、初の女性でもある。

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