パナソニック、津賀社長が進める「譲位」の準備 異例の役員人事に、深刻さ増す「収益柱」探し

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津賀社長が抱える目下の宿題は、テスラ事業の黒字化だ。7月上旬までは、パナソニック元副社長で、2017年秋にテスラに移籍した山田喜彦氏や、テスラ向け電池の開発母体である旧三洋電機時代から深い付き合いのあるJ.BストローベルCTOが両社の橋渡し役となっていたが、山田氏は7月上旬、ストローベル氏も同月下旬にテスラを去った。

橋渡し役の後任は存在するが、「テスラの中でなかなか苦労している」(津賀社長)と、これまでのように上手くはいっていない模様だ。

現在は3カ月に1度津賀社長自身が渡米し、イーロン・マスクCEOと直接ミーティングをする体制に。議題は電池の価格交渉だ。「2019年度は生産性を上げて供給価格を安くするよう努力する。その代わり、来年以降、テスラの収益が上るようになったら、われわれも利益が出るようにしてほしい」と持ちかけ、事実上の値上げを迫っている。

もちろん、テスラ側としても快諾するわけにはいかない。直近では、9月にも会談が設けられる予定だったが、マスク氏の都合で直前に取りやめになったという。

会長として残るシナリオも

10月23日には、中国・上海の工場地帯に建設されているギガファクトリーが車両の試験生産を始めた。ただ、ここで電池のセルを供給するのは、パナソニックではなく韓国LG化学である可能性が高い。

パナソニックは「一度他社の電池を使ってみて、世の中の厳しさを思い知るべき」(津賀社長)とプライドを見せるが、「テスラはパナソニックへの依存度を下げようとしている」(電機業界のあるアナリスト)と見る向きもある。仮に津賀社長が4月に退いたとしても、会長に残ってテスラ担当を続けるというシナリオはありうる。

そうこうしているうちに、パナソニックに対する市場の目は厳しさを増している。2017年に1000円台をキープしていたパナソニックの株価は右肩下がりで落ち、今年8月15日には、787.7円の年初来最安値をつけ、10月28日現在でも、900円前後にとどまる。

10月31日には、パナソニックの4~9月期決算が発表される予定だ。同日開かれる説明会には、津賀社長が出席して今後の業績予測などを語る予定だったが、28日に急きょ欠席することが発表された。会社側は「(決算説明会ではなく11月下旬に開催されるIRデーで)きっちり説明をしたい、ということ」と理由を説明する。

隘路にはまり込んだ27万人の巨艦は再び浮上することができるのか。津賀社長が進める新しい経営体制構築への地ならしは、まさに正念場を迎えている。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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