パナソニック、津賀社長が進める「譲位」の準備 異例の役員人事に、深刻さ増す「収益柱」探し

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その背景を、9月に津賀社長はこう語っている。

「そもそも、執行役員の数がここまで膨れ上がってしまったのは、パナソニックがBtoCの家電の会社からBtoBにシフトしていく過程で、他社との交渉をするために個別事業の担当者が『役員の名刺が必要だ』ということが増えたから。ただ、そのうち役員の同質化・高齢化が進み、(役員定年までに)ことを荒立てることをするよりは、現状の仕事をこなすほうがいい、という雰囲気になってきた。すると、過激なことにチャレンジする若い人が攻撃の対象になってしまう。議論すればするほど、今のやりかたはあかんよなぁ、と」

参考にしたトヨタの人事改革

そこで参考にしたのが、今年1月に行われたトヨタの人事改革だ。トヨタは、2018年12月まで55人いた役員を1月時点で23人に絞り、常務役員以下、次長級までの計2300人を新たに設けた「幹部職」に配置する人事を行った。

6月に行われたパナソニックの株主総会で執行役員の多さに関する株主質問が出ると、人事担当役員の三島茂樹氏は「役員のあり方についてトヨタ様に勉強させていただいている」と回答。「役員の肩書が取れて幹部職になったトヨタの社員が、ビジネス上不利益を被った、という話も聞こえてこず、うちが同様の改革をしても支障はないと判断した」(あるパナソニック社員)という。

では、事業執行層の新設はどのようなメリットがあるのか。旧来の執行役員体制では、チャレンジをしたい若手を一度役員に登用すると、社員格に戻ることはできないため、パフォーマンスが悪ければ最悪の場合、役員を退任し、会社を去ることになる。そこで、個別事業の責任者を社員格の事業執行層にすることで、チャレンジしやすい環境を作り出そうというのだ。

津賀社長によれば、ここでいう「若手」とは30代も含まれるが、10月からの体制変更で役員から事業執行層に移った顔ぶれを見ると、若手といえるのは42歳の馬場氏くらい。「言行不一致ではないか」と不満を漏らす社員もいる。それもそのはず、複数の幹部が今回の執行役員改革は、制度面で形を整えたにすぎず、実際の布陣が決まるのは、来年2月末に発表される4月人事であることをほのめかしている。

若返りを図るのは、幹部だけではない。津賀社長は、後任人事についても「社内で多様な経験を積むために50歳をこえている必要はあるが、若ければ若いほどいい」と語る。

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