「水の不要な消毒液」がアフリカに見つけた金脈 「手を清潔に」を説くサラヤの“きれいごと“

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真山:確かに、国を巻き込めると強いですね。

更家:保健省というところが協力的ではあるけれど、最初の頃は入札のリストに入れてもらうようにお願いしても、なかなか、「お金が無いので入れられません」と言われ、説得には時間がかかりました。

真山:そもそも、消毒薬の入札はありましたか?

更家:まぁ、ありますけど、消毒剤は、非常に額が少ないですね。普及も形だけつけていたら良いというのが実情でした。保健省は、建前は良くても現実はやっぱりお金を握っていますので。地元から声を上げないとなかなか難しいですね。

真山:予算がないと言われると、赤字覚悟で“安くして使ってもらう”という戦略を立てがちです。

更家:“安く”ではなく、“売らずに使ってもらう”という戦略を立てました。普及のために最初に安く売ってしまうと、価格を維持できなくなるのである程度使っていただきながら実際の効果を見せてビジネスにしていこうと考えました。

日本人の常識を手放さないとアフリカでは通用しない

真山:日本人の常識を手放さないと、アフリカでは通用しないと感じます。

「手を清潔に」が現地の人の習慣に(写真:NHK大阪放送局)

更家:例えば、日本人の目線だと、食事を作る人が手を洗わないと気持ち悪いですよね。その認識自体がないと売れません。そのため病院は、分かりやすいです。必ず手を消毒することを徹底させると、院内感染率が下がり、産科病棟ではお母さんが産褥熱(さんじょくねつ)にかかる割合が下がります。手を消毒させる割合が40%を超えると、がたっと落ちてくるのです。病院の水を調べると原因は大腸菌が非常に多いとのことでした。

渡邊:水に大腸菌がすでにいるんですね。

真山:ウガンダで働く日本人社員は何人いるのですか?

更家:昔は3人ぐらいいましたが、今は1人です。

真山:日本人はアフリカの国々に対する基礎知識が乏しいので、相当難しい印象があります。現地組織を作ったら、1人でいいんですね。

更家:はい。だから地元の人を採用しています。例えばアフリカのウガンダの東大と呼ばれる、マケレレ大学の公衆衛生を卒業して当社に入社してくれた社員がいます。長崎大の博士課程に留学していたこともあり、また当社に戻ってきてもらいました。そのような社会的使命感を持った優秀な人にも恵まれています。うまく企業理念を受け継いでいただけたらと思います。

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