平尾誠二さんが築いた「日本ラグビー躍進」の礎

外国人選手が「個」の輝きを教えてくれた

それ以来、ことあるごとに平尾さんを訪ねては、食事をご一緒させていただいた。かなり多忙なスケジュールだったはずなのに、一度も断られた記憶がない。ほんのわずかでも時間を捻出して会ってくださった。講演会などのために沖縄にお越しになる際には必ず連絡があり、案内役を務めさせていただいた。

「 自立しないとな 」。交わす言葉の数はそれほど多くはなかったが、平尾さんは、依頼心と補助金事業が横行する沖縄の現状の甘えを見抜いていた。訪れるたびに立派な球場や道路が整備されていったが、利益の大半は本土企業にもっていかれ、沖縄の人々の暮らしが真に潤うことはないと言った僕の言動に平尾さんはさらりとこう返した。「自力つけないとな」と。

「一体感」の錯誤

ラグビーW杯の今大会で、外国人の圧倒的な「個」の推進力、突破力に学ばなければ、日本代表の躍進はなかった。平尾さんは早くからそのことに気づいていた。平尾さんが本当に得たかったのは、多くの外国人には備わっていて、日本人には足りない、自らにコミットする個(セルフ)を拓く、つまり「自主性」と「自律」ではなかったか。

現実の成果として挙げられるOne Team、「組織の力」や「一体感の醸成」はややもすると、勝敗によっては連帯責任という無責任な集団主義にターンオーバーしかねない。出る杭を打ち続けることで日本的な結果の平等を求め、横並び意識で個を萎縮させ、やはり従わぬは「悪」と捉える見えざる暴力によって、個の自主性を剥奪する。表層的なイベントの成功にばかり目を向けていると、平尾イズムとは似て非なる方向へと導き、追いやられる危うさを感ぜずにはいられない。

南アフリカ戦を戦い抜いた代表選手たち(写真:筆者提供)

「下を向く必要はない」。準々決勝・南ア戦の敗戦後、最後の円陣でリーチ・マイケル主将が放った言葉が含蓄あり絶妙であったと賞賛が集まる。なぜなら、彼のこの言葉がまさに、放っておけば勝ち負けの結果にとらわわれ、とかく自らの精一杯の働きに不要な反省までも強いる日本人的な思考の歯止めとなり、後ろ盾となったからにほかならない。

自国での代表権を得る可能性を捨て、外国人選手が日本代表になったのは、それぞれに与えられた自由な生き方の「選択」の結果だ。彼らは組織や国籍にとらわれず、実現したい夢や目的の一点に集中し、自らの責任による決断で人生に対するオーナーシップを発揮した。

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