「うまかっちゃん」が九州人の定番となった理由 適度なとんこつ味、「マルタイ」派も
全国に商品展開する大手メーカーが、ここまで一地域に特化した商品を出し続けるのは珍しい例だ。実は、当初から「九州」を強く意識していた。
発売前年の1978年、ハウスの即席めんは九州エリアで不振を強いられており、生産を担う福岡工場では、生産ラインが動かない日は工場内の草むしりもしていた。そんな時期に、生産計画を相談中のラーメン担当プロダクトマネージャーに、福岡工場長が「社員食堂で社員がハウスのラーメンを食べない」と話した言葉が、マネージャーの耳に突き刺さった。
「一方で、当時の営業担当者からも『九州で売れるラーメンを開発してほしい』という声が上がっていました。本社に提案した結果、『とんこつ味のラーメンを4カ月以内に開発せよ』と指令が出た。そこで関係者が、九州各地のラーメン店を20店以上食べ歩きながら、スープを開発したのです」(安達氏)
スープの味を決める際には、福岡支店と福岡工場も協力し、地元の主婦には試食テストも実施した。今では珍しくないが、40年前の話だ。商品名も当初は「こらウマカ」を考えた。
だが、グラフィックデザイナーとして多数の作品を残した西島伊三雄氏(福岡市出身。故人)に相談した際、博多弁でとてもおいしいを意味する「うまか」に「ちゃん」をつけるネーミングがひらめき、愛用の筆で一気に「うまかっちゃん」と書き示したという。イラストは博多祇園山笠の子どもたちだ。
卵の入れ方も、人それぞれ
今年9月12日、ブランド40歳の誕生日に「うまかっちゃんサミット」を開催し、全国から18人の熱い思いをもった人(ファンサイト「うまかっちゃん推進部」から厳選)が集まった。実施会場は、あの草むしりをした福岡工場だった。
「東京都や滋賀県から来られた人もいて、JR古賀駅に集合後にバスで福岡工場に向かいました。製造ライン見学後に試食タイムを設けましたが、人それぞれの調理スタイルが違い、うまかっちゃんへの思いも異なる。私たちも新たな刺激を受けました」と安達氏は語る。
主に家庭でつくる即席めんとはいえ、作り方は人それぞれだ。
「卵を入れる場合でも、ゆで卵・半熟のゆで卵・かき玉子・生卵(を鍋に落とす)など、みなさんの作り方はさまざまです。中には“たまごダブル”という、かき玉+生を入れる方もいた。焼きラーメン風に、茹でた麺をフライパンで炒める方もいます」(安達氏)
定番品のスープはかなりあっさりめなので、アレンジしやすいのもあるようだ。メーカーとしてはパッケージ裏に記してある作り方を勧めるが、作る人のアレンジによって味の多様性が広がった一面もあるだろう。
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