日本中が「ラグビーにわかファン」で溢れる理由

4つの観点からW杯の盛り上がりを読み解く

プールAの最終戦となる4戦目の相手は、日本の宿敵・スコットランド。前大会の初戦で優勝候補の南アフリカに勝ちながら、次のスコットランドに大敗したことで準々決勝に進めなかっただけに、リベンジのムードは最高潮に達していました。

しかも、スコットランドは日本がサモア戦で決めた最終トライに異議を唱えたほか、「台風で試合中止になったら法的措置も辞さない」などの過激な発言を連発したことで、にわかファンたちの心にも火をつけたのです。

試合はスコットランドに先制トライを奪われながら、怒涛の4連続トライで逆転。スコットランドに意地の2トライを返されたものの、何とか逃げ切って前大会のリベンジを果たし、見事にプールAの1位通過を成し遂げました(最終結果は、日本28-21スコットランド)。

4試合すべてが、「ルールや選手を知らない」にわかファンでも盛り上がれる劇的な勝ち方だったのです。これまで「ラグビーは難しい」「どう見たらいいかわからない」と思っていた人々を引きつけたのですから、魅力的な試合だったことは間違いないでしょう。1990年代のサッカー日本代表がそうだったように、こうした試合を続けることで、にわかファンが徐々にルールや選手を覚え、人気が定着していくものです。

会社組織にも似たラグビーの選手とプレー

にわかファンが日本中にあふれる2つ目の理由は、日本代表選手たちの振る舞い。

ここまで得点ランキング1位の田村優選手、トライ数1位の松島幸太朗選手といった数字を残している存在こそいますが、彼ら自身、個人の活躍には言及せず、「ONE TEAM」という合い言葉を連呼。「日本チームの勝利」であることを強調していますが、さらに「選手やスタッフだけでなく、応援してくれる人々も含めたONE TEAM」というコメントを欠かせないことも、人々の心に響いています。

もともとラグビーは試合出場する15人のほか、ベンチの8人、ベンチ外の8人も加えた「31人で日本代表」という大所帯。数あるスポーツの中でも最大級の編成であり、だからこそ「個人よりもチーム」の意識が重視されています。

そのことは、1984~1985年に放送されたラグビードラマ「スクール☆ウォーズ」(TBS系)にスター選手を存在させず、「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」(1人はみんなのために みんなは1人のために)を合い言葉にしていたことからもわかるでしょう。

野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールなどの団体競技でも個人技の重要性が叫ばれる中、今回のワールドカップを見て「ラグビーほどチームの力で戦うスポーツはないのでは?」と感じた人の声がネット上で飛び交っていました。そんな選手たちの姿が2011年の東日本大震災以降、相次ぐ災害のたびに「絆」を意識してきた日本人の琴線に触れたのではないでしょうか。

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