期待の新人が「期待はずれ」に終わりがちな理由 「人気」と「評判」をはき違えていませんか?
仕事というのは、決して会社の中の人間関係だけで完結するものではありません。ほかの部署との連携はもちろん、社外の人といかにうまく協働していくかということが問われます。仕事という意味で長期的に見たときには、直属の上司や部署の同僚の間で人気者になることには、さほど意味はないのです。
「人気者」が気をつけておくべきこと
コミュニケーションに長けた「人気者」タイプの人は、入社1年目にはとくに、「人気」にかまけないように自制しておくことをおすすめします。というのも、仕事を通じてじっくり「評判」を高めていかなければいけないときに、身近な人からの「人気」が足を引っ張ってしまうことがあるからです。
周囲の人から「人気」を得て、それを維持することは、長期的に見たときには、その人の成長を妨げてしまうことがあります。上司や同僚から期待されるキャラクターを演じ、ポジションをキープすることに時間をとられ、自分の枠組みを超えた役割や仕事に取り組むという、いわゆる“脱皮”の機会を失ってしまうからです。
それはいわば、周囲から期待される「仮面」に自分自身を乗っ取られてしまうということです。本当であれば、いろんな経験を積まなければいけない時期に、いつも周囲から期待されるキャラクターを演じるばかりで、自分の枠の外に出られなくなってしまう。まるでサイドブレーキを引いたままの自動車のように、仕事で成果を上げ、成長していくことが難しくなるのです。
能の「調伏曽我(ちょうぶくそが)」という演目の、不動明王役に使われる「不動」という面があります。この面には、室町時代、名役者と言われた金剛氏正が、この面をつけて舞ったところ、顔から外れなくなり、無理に取ったところ、血痕が残ってしまったという「肉つき面」の伝説があります。
『グイン・サーガ』、手塚治虫の『火の鳥』や『ジョジョの奇妙な冒険』など……、フィクションの世界では、仮面や獣の皮をかぶって、それが外れなくなってしまう人物の例がよく出てきます。昔から人は自分の演じる役割、すなわち「仮面」に支配されてしまうことの恐ろしさに、注意を喚起してきたわけです。
もちろん、最初から最後まで「社内の人気者」として生き抜いていく、という人もいます。でも、それは芸能人としてメディアで活躍してもおかしくないぐらい、特異なレベルのコミュニケーション能力を備えた人だけです。ある種の「コミュニケーション・アスリート」でなければ、周囲から期待されるキャラクターを維持し続けることは難しいものなのです。