「当日配送」ベンチャーが都内で続々誕生の事情 中小配送会社を組織化し、新サービスを展開

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同事業を統括するクックパッド買物事業部の福﨑康平本部長(28歳)は「注文が入ったその日のうちに食材の鮮度を落とさずに届けるには、自社で配送を管理する必要があった」と話す。

都内など30カ所に設置されているマートステーション(写真:クックパッド)

配送作業は中小の配送会社に属するドライバー十数人に委託し、毎日商品を配送している。IoTデバイスで車両内の温度管理を徹底するなど、鮮度保持への意識は高い。

クックパッドマートでは1商品しか注文しなくても配送料は無料。「気軽に毎日使ってもらえる生鮮食品ECを目指すうえで送料ゼロは不可欠」(福﨑氏)だからだ。

過去に「やさい便」という宅配サービスを手がけていたが、配送コストが重く、2016年8月に終了した。そこで配送コストを抑えるために、事前に決定した道順に沿って商品を届ける「ルート配送」を配送方法として採用した。

都内など30カ所の「冷蔵庫」に配送

消費者が注文した商品は、自宅ではなく、指定した「マートステーション」と呼ばれる冷蔵庫に配送される。マートステーションは現在、東京23区と神奈川県川崎市・横浜市内のカラオケ店やドラッグストアなどに計30カ所設置されている。

店舗からの商品配送はクックパッドが代行しているが、それぞれのマートステーションを巡回して配送すればよいので、宅配と比べて配送効率がいいという。「そもそもターゲットである共働き世帯は、荷物を対面でなかなか受け取れない。配送コストを抑えるためにも、生活圏内に設置したマートステーションへ配送するモデルを形にした」(福﨑氏)。

自社で配送を管理するのはコスト抑制のためだけではない。ユーザー満足度の向上や出品者の営業支援のため、マーケティングデータの活用を進めている。「クックパッドマートに出店する出品者の売り上げを伸ばすためには、商品の売れ行きなどのデータを踏まえながら、どのステーションにどんな商品を配送するか、考える必要がある。そのためには配送を自社で管理して、商品をトレース(追跡)しなければならない」(福﨑氏)という。

人口密度の高い都市部では新興の配送サービスが勃興してきている。いかに効率的に、ニーズに合った配送サービスを提供するか。そうした動きは大手宅配事業者にとっても無視できないものとなりつつある。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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