織田裕二が「世界陸上」に欠かせなくなった理由 12大会連続、紆余曲折と変化の22年間

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例えば、昨秋放送の「SUITS/スーツ」(フジテレビ系)では、バディ役を演じる25歳年下の中島裕翔さんを穏やかにリードし、27年ぶりに共演する鈴木保奈美さんを気遣い、知名度の低かった小手伸也さんにカメラが回っていない場所でも役としてのかけ合いを重ねる姿が目撃されました。

もう1つ織田さんの修正力として感じるのは、バラエティー出演などに見る心境の変化。織田さんは昭和の名優たちがそうだったように、「俳優業をするうえで見る人の邪魔になる」という理由から、基本的に「プライベートの話をしない」というポリシーを貫いてきました。しかし、近年では「作品を見てもらうためなら」と番宣出演し、プライベートを明かすように変わっているのです。

実際、9月28日に放送された「オールスター感謝祭」(TBS系)にドーハからの生中継で出演した織田さんは、番宣のために「ぬるぬる障害物競走」の審査員を快諾。視聴者の「嫌々ではないか」「不機嫌になるのでは」という不安を一掃し、笑顔で対応しました。

「世界陸上」の出演を継続しながら、時代や人々の声に合わせて修正する織田さんの姿を私たちは見てきました。だからこそ、例えば「織田さんが『世界陸上』を降板して、ほかの芸能人がメインキャスターを務める」ことは考えられないのです。

「代表作は『世界陸上』」の名優に

史上初の中東開催となったドーハ大会も残りわずか。ふだんは8月に開催される「世界陸上」を9月末開幕にずらしても、その暑さは壮絶なものがあるようです。

今大会は「暑さに強い、熱い選手は誰なのかを見極める」という意味で、来年7月24日から開催される東京オリンピックの試金石になっていますが、それは織田さん自身も同様。これまでの大会と同様に大会を盛り上げようとする熱い姿を見て、「東京オリンピックの陸上競技中継にも参加してほしい」と思った人は少なくないでしょう。

最終日の6日深夜にはメダル獲得の期待がかかる「男子4×100mリレー決勝」も行われるだけに、織田さんのテンションはさらにヒートアップ必至。選手たちの奮闘を応援するのはもちろん、最高気温40度を超えるカタールの大会にぴったりの織田さんを最後まで見届けてはいかがでしょうか。

10年後、もしTBSの「世界陸上」中継が続いていたら、織田さんは61歳になっています。そのとき、「織田さんの代表作は?」という質問に、「東京ラブストーリー」や「踊る大捜査線」よりも、「世界陸上」という声が上回っているかもしれません。それもまた数々のヒット作を持つ、“俳優・織田裕二”ならではの勲章に見えるのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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