織田裕二が「世界陸上」に欠かせなくなった理由 12大会連続、紆余曲折と変化の22年間

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当時29歳の1997年にも「踊る大捜査線」(フジテレビ系)に主演するなど絶好調の織田さんに、TBSが「世界陸上」のメインキャスターをオファーした最大の理由は、その人気にほかなりません。そのとき織田さんは陸上競技に詳しいわけではなく、学生時代に陸上競技をしていた経験もなかったのです。

また、「世界陸上」は、「夏季オリンピック」や「サッカーワールドカップ」を上回る世界200超の国と地域から約2000人ものアスリートが集結するビッグイベントですが、日本人にとっては微妙な存在。陸上競技は小学生時代のころからなじみがある一方、「世界陸上」は日本人がメダル争いになかなか絡めないこともあって、マラソンや短距離走など一部の花形競技以外の関心は低かったのです。その点、TBSが人気者の織田さんにオファーを出し、継続起用したことで認知度が上がったのではないでしょうか。

ただ、すべてはうまくいかないもので、織田さんは誰も予想しなかったつらい時期に突入していきます。

「地球に生まれてよかったー!」の必然

織田さんは1997年のメインキャスター就任以降、なぜか俳優業の出演ペースも、作品の視聴率もダウン。1998年と2003年に公開された『踊る大捜査線THE MOVIE』が大ヒットした一方、他のドラマ、映画、歌では思うような評価が得られない時期が続きました。織田さんがどんなに奮闘しても、「『踊る大捜査線』の青島俊作だけ」という印象を払拭できなかったのです。

それでも「世界陸上」での織田さんは、「今日は寝られないよ!」「見なかったらアホ!言いすぎた」とコメントするなどハイテンションをキープ。子どものように大喜びしたり、感極まって涙目になったり、悔しすぎて絶句したり……。今でこそ松岡修造さんや松木安太郎さんなどのスポーツ中継で喜怒哀楽を前面に出す出演者が受け入れられていますが、数年前までは批判がほとんど。中でも織田さんは格好の標的となっていました。

さらに、織田さんへの批判が強くなった原因は、制作サイドの演出にもあります。「世界陸上」はアジアとヨーロッパで交互に開催されるため、東アジア以外の大会では深夜の放送になることが多く、「注目選手を“まもなく登場”とあおりながら、なかなか登場しない」「アスリートに奇妙なキャッチコピーをつけて興味を誘う」などの演出にクレームが殺到してしまいました。そのような制作サイドの問題点も、番組の顔である織田さんへの逆風につながってしまったのです。

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