震災復興事業が被災者を脅かす 土地区画整理、河川堤防建設で家を追われる人々

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さらに問題になっているのは、修理にかかった費用そのものが補償されるわけではないということだ。住宅の移転に際しては、「『公共用地の取得に伴う損失補償基準』(公共用地補償基準)に基づいて補償される」(常山氏)という決まりだが、築年数が経過している建物は現在ある価値しか補償されない。平時ならばともかく、震災をやっとの思いでくぐり抜けた住民にとっては新たな住宅を建てることは難しく、条件が厳しい。

日本弁護士連合会の復興支援チームに所属する岡本正弁護士は、「土地区画整理事業は、本来、地価の上昇を見込み、行政と住民が(ともにメリットを享受できる)WINWINの関係にあることを前提としている。被災地の場合、復興の手法として用いられているものの、WINWINの関係になるとは限らない」と語る。公共用地補償基準を用いて用地買収を進める場合に、「住民の生活にどのような影響が生じうるのか、未知な部分が多い」(岡本弁護士)という。

復興事業が本格化する前に、一度、住民生活の視点から再点検が必要だ。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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