震災復興事業が被災者を脅かす 土地区画整理、河川堤防建設で家を追われる人々
同じく幸町で水産加工業を営む春日淳一さん(67)は、「区画整理のことを考えると夜も眠れない」と話す。
丘陵地の麓にある春日さんの自宅と隣接する工場には大地震発生から間もなく、大人の背丈ほどの津波が押し寄せた。自宅の1階は水没し、イカの塩辛の原料を製造していた工場の建物は天井まで海水に浸かった。自宅と工場の改修に1000万円以上もかかり、震災前からあった借入金と合わせて、「二重ローン」が現実になった。
そうした中で持ち上がったのが、市による土地区画整理事業だった。市役所の説明によれば、春日さんの自宅前の幅4メートルの道路を9.5メートルに広げて2車線にし、高台にある市民会館や気仙沼中学校につながる避難道路の性格も持たせるという。
土地区画整理で廃業の危機に
春日さんが頭を抱えているのは、道路の拡幅とともに行われる地区全体の盛り土かさ上げ工事によって、立ち退きを迫られるためだ。道路や公園、災害公営住宅など公共用地を捻出するための「減歩」(地権者の負担による面積の削減)も加わるため、現在の土地では自宅か工場のどちらかの再建をあきらめなければならなくなるという。
「工場を休止して別の場所に新たに建てるにしても時間がかかる。休んでいる間に注文を失って廃業を迫られるかもしれない。8人の従業員も行き場を失ってしまう」(春日さん)。仮に工場を再建できたとしても、「70歳を目の前に、新たにローンを背負い込むことになりかねない」(春日さん)。「三重ローン」が現実味を帯びる。
気仙沼市の村上博・都市計画課長は「一般の公共事業と同様に、建物や事業の損失を補償させていただく。きちんと調査と説明をし、十分な補償額を提示したい」と語る。ただし、現時点では補償の中身ははっきりしておらず、移転や工場の再建に伴って発生する費用がきちんとカバーされるかどうかもわからない。
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