震災復興事業が被災者を脅かす 土地区画整理、河川堤防建設で家を追われる人々
震災で3500人を上回る死者・行方不明者を出した宮城県石巻市内では、津波や洪水から町を守ることを目的に、市内の中心部を流れる旧北上川の堤防建設・拡幅工事が進められている。震災で地盤沈下した市街地を水害から守るための堤防建設は必要不可欠である一方、建設に伴って自宅の移転を迫られた住民が途方に暮れている。
市内の不動町に住む女性(75)は「立ち退きのことを考えると頭が混乱する」と話す。女性は心臓に持病があり、抗うつ薬を欠かすこともできないという。
この女性の場合、約100坪の自宅敷地のうち30坪だけが堤防建設工事とともに付け替えが必要になった道路の予定地にかかってしまった。
移転先のアパートも見つからず
「計画は2度も見直しになったうえ、2012年3月の説明の際に、自宅の敷地の一部が取られるとの話があった」(女性)。震災後に数百万円もかけてリフォームした築53年の自宅は取り壊しが避けられないという。
「できれば今の家に住み続けたい。それができないのなら、残った土地に家を建て直したい。でも、買収面積が少ないうえに、建物の築年数が経過していることもあって、提示されている補償金では新しく建てるのにはとても足りない。無理をして建てたとしても、老後の生活に必要な資金がなくなってしまう。どうしていいのかわからず、途方に暮れています」(女性)。
家を建て直すにしても、いったん仮の住まいを探さなければならない。しかし、「石巻では貸し家が少ないうえに、飼い猫を連れて行けるアパートを見付けるのは簡単ではなさそう」と女性は頭を抱える。同居する二男(45)が仮住まいとなるアパートを探しているが、いまだに条件に合う物件は見つからない。
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