大日本住友、「3200億円巨額買収」の皮算用 主力薬「ラツーダ」後の大黒柱を確保できるか

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大日本住友が開発するがん領域の候補薬で期待されていたのが、「ナパブカシン」だ。胃がん、膵がん、結腸・直腸がん向けに、臨床試験(治験)の最終段階である第3相まで開発が進んでいた。

しかし、2017年6月に胃がん向けの開発に失敗した。2019年7月には膵がん向けの治験も中止し、現在残るのは結腸・直腸がん向けのみとなった。「膵がん向けの失敗によって、(1000億円程度を見込んでいた)ナパブカシンの2022年度の売上高は半減してしまった」(野村社長)。ナパブカシンをがん次世代薬の柱にするという目算は外れたのだ。

【2019年10月2日15時31分追記】野村社長のコメントを上記のように修正いたします。

大日本住友の見通しに「楽観的すぎる」との声

買収するロイバント社が開発している主な新薬候補は、治験の第2相以上に進んでいるものが20強ある。がん領域の立ち上げに苦戦し、差し迫るラツーダ特許切れの影響を最小限に抑えるための一手が、今回の買収による新薬候補の拡充だったというわけだ。

大日本住友製薬の業績を牽引してきた「ラツーダ」。特許切れが近づいている(写真:大日本住友製薬)

中でも大日本住友が特に期待を寄せているのが、子宮筋腫や前立腺がん向けの「レルゴリクス」と過活動膀胱薬の「ビベグロン」という薬剤。どちらも一部の適応症では治験第3相をクリアしており、2020年には発売にこぎつけられる見込みだ。

これら2製品について、野村社長は「それぞれ1000億円の売上高に届くポテンシャルを持っている」と話す。大日本住友からラツーダの売上高が消えても、2製品があれば十分カバーできるという目算だ。

大日本住友がこうした自信を見せる一方で、「見方が楽観的すぎるのではないか」(クレディ・スイス証券の酒井文義アナリスト)と、疑問の声も上がる。

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