シンクタンクこそ女性の力をもっと活かせる訳 政策起業力持つ人材を育てなければならない

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今井:ところが、最近の「働き方改革」などで言われているのは、欧米では一般的なジョブ・ディスクリプション(職務記述書。職種職位の職務内容を記述した雇用管理文書)を活用して、ジョブ型の流動的な労働形態を取り入れ、社会全体で適材適所をバランスよく取ろうということです。メンバーシップ型では賃金は年功序列ですが、ジョブ型では賃金は仕事の難易度に応じて決められます。

選択肢が狭い女性の働き方

雇用機会均等、共同参画といっても、メンバーシップ型では女性は事実上さまざまな不利益を強いられてきました。採用時にも採用後の仕事や昇進、賃金面でもいろんな壁があります。そこで、優秀な女性は諦めて飛び出してしまいます。飛び出した途端、ジョブ型で働くしか選択肢はなくなります。

船橋洋一(ふなばし よういち)/1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱えるさまざまな問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など(撮影:尾形文繁)

私はジョブ型で仕事を続けてきて、大変面白いし後悔もありませんけれど、日本の社会ではジョブ型人生は大変で、気を抜くことができません。そのときそのとき、しっかりと成果を出さなければ次の仕事がなくなります。報酬の面でも不利です。日本では、中途採用者には、就職に失敗した人とか、途中で脱落した人といったネガティブなレッテルを貼られがちです。そのため、採用時には給料が低く抑えられる傾向があります。ですから、男性が優遇されている日本の社会では、機会費用を考えると男性でこの世界に飛び込む人は少なかったと思います。

ところが、女性は反対で、優秀な人ほどこの世界に飛び込んできます。やる気のある人は、エンパワーするために海外に留学して学位を取得したりして視野も広げます。ところが今度はそういう人はなかなか日本には戻ってきません。それはもったいないことだと思うんです。

その点で、シンクタンクなどの政策コミュニティには、そうした人材の受け皿になれる可能性があると思います。日本のシンクタンクコミュニティは、現状ではジョブ型と割り切らざるをえない状況ですから、ジョブ型の人生を選択した女性がもっと入ってこられるはずです。

そういうことになれば、公共政策の将来も変わっていくんじゃないかと期待もしています。今の政策コミュニティは、男性中心の社会で、出てくる政策も力持ちの男の人たちの発想が基本です。それでは、少子高齢化対策の政策も、安全保障や防災といったハードな議論にも大きな変化は期待できません。けれど、そこに女性が大勢入ってくれば変われると思うんです。

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