船橋:そのとおりですね。いまこそ日本の中のやる気のある人々がもっと世界に出て、世界のルールや秩序やネットワークやフィードバックをつくるため、参画すべきだと思います。その際、やはり政策起業力がますます必要になってきます。そういう人材を育てなければなりません。
実はわたしどものAPI(アジア・パシフィック・イニシアティブ)では来年から、イギリスのある世界的なシンクタンクに研究員をリサーチ・フェローとして2年間、派遣することを考えています。話し合いがいま、最終段階なのでまだ相手の名前はお伝えできないのですが、私どものこのプログラムによって、世界最高レベルのグローバル・シンクタンクが持つ政策起業力を身に付けてもらいたいと念じています。なんとか実現させたいと考えています。
シンクタンク発だった「事業仕分け」
船橋:民主党政権時代に「事業仕分け」がありました。非営利独立系のシンクタンク構想日本の加藤秀樹さん(旧大蔵省大臣官房企画官などを経て、構想日本を設立)が、事業仕分けを担当する行政刷新会議の事務局長という形で大きな仕事をされたわけですが、シンクタンクの役割とか社会的な機能といった観点から、どのように評価されていますか。
今井:1つのシンクタンクが発案した政策手法が、地方自治体や中央省庁に実際に適用され、それを見に実に多くの国民が参加したという現象は、かつてないことでした。シンクタンクのキャンペーンとして1つの成功事例だと思います。最初は小さな自治体から初めて、それを徐々に洗練させていき、ああなるまでに10年以上かかったと言われていますね。
船橋:珍しい事例ですけどね。
今井:民主党政権以前に、6省庁、36自治体で実施されたと聞いていますが、シンクタンクが提案した政策が、あんなふうに実現することがあるんだなと驚きました。
船橋:東京財団にいらしたとき、ほかに政府の政策を動かすバネになったというような事例はありますか。
今井:シンクタンクが出す提言と実際の政策の因果関係は、通常それほど明確でないので一概に申せませんが、所有者不明土地(登記簿謄本などで所有者が特定できない土地。国土の20%にあたると推計されている)の問題はその1つだと思います。私が入った頃に開始した政策キャンペーンで、今も続いているはずです。
船橋:今もやっているんですか。
今井:吉原祥子さんという研究員の方が一貫して取り組んでおられ、中央公論新社から新書も出版されています。
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