香港がフェイクニュースには踊らされない理由

大陸からの情報操作は効果を上げていない

鍛治本氏によれば情報操作、プロパガンダはターゲットとなるグループを疑心暗鬼にさせるよう、感情的に煽ったり、虚実を混乱させたりするようなメッセージを流すが、そのためにはまずメッセージそのものの信憑性が高くなければならない。

「SNS上に氾濫しているあからさまなプロパガンダメッセージは簡体字が多く、繁体字を使用する香港での影響は限定的。さらに繁体字で書かれたものであっても、香港で使用される広東語の用法とは異なり、中国で使用される『普通話』用法で書かれているものなどは浸透しづらい」(鍛治本氏)。香港と中国との言語の違いがひとつの「免疫」となっている。

また言語以外でも鍛治本氏はデモ隊の情報戦の巧みさも指摘する。「デモに関連した膨大な情報の中で、いわゆる「偽」情報というのは一部で、圧倒的多数は感情に訴えかけるメッセージで、このレベルでの情報戦では、民主派、デモ隊の若者の方の技術が上」(鍛治本氏)であるという。

親中派メディアの影響力は限定的

またデモの参加者からは「普段からウェイボーやウィーチャットなど(中国)大陸の対話アプリは使っていないし、接触するメディアは香港メディアか欧米メディアだから大陸からの情報は気にしたことない」(20代大学生)と話す。香港にも大手テレビ局TVBが中国寄りと指摘されるが、公共放送のRTHK(香港電台)や中国に批判的なアップルデイリー(蘋果日報)に支持が集まり、親中派メディアの影響力は限定的だとされる。

フェイクニュースによって世界各国の政治が影響を受けているなか、香港では言語や若者のメディアリテラシーの高さなどが防波堤となっている。香港返還から20年以上がたち、若い世代には「普通話」も教育されている。にもかかわらずこの状況が続いているのは、自由な言論を知っている社会を権力によって言論統制のもとに置くことの難しさの証しともいえる。中央政府には、この状況は極めて腹立たしいに違いない。

『週刊東洋経済』10月5日号(9月30日発売)の特集は「中国 危うい超大国」です。
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