オフィス街のコンビニでは、おにぎりとカップ麺をイートインスペースに運んでいるビジネスパーソンも多いのだ。このささやかなランチタイムすら、それは外食ですから10%いただきますと言われたら立つ瀬がないのではないだろうか。
同じ祭りでも肉フェスは10%、お祭りの屋台は8%?
せっかくなので、この“摩訶不思議”な軽減税率の境界線について、もう少し語ろう。さすがに国も説明不足だと思ったか、8%なのか10%なのかの線引きについて国税庁(国税庁消費税軽減税率制度対応室)が106ページにも及ぶQ&Aで説明している。
「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」というもので、実に細かい。先ほどのスーパーの事例では、フードコートやイートインスペースが外食扱いなのは、食品の販売者が飲食のためにイスやテーブルを用意しているから、というのが理由だ。イートインスペースではない、店内の休憩用のベンチで食べたとしても、やっぱり10%となるという説明だ。
しかし、バックヤードでスーパーの店員が買ってきた食品を食べることがあっても、それは8%でいい。お客が飲食に利用しないバックヤードは、飲食を提供する施設にはあたらないからという理由らしい。
この「飲食を提供する側」が肝で、肉フェスなどのフードイベント等で、食事の提供業者が自ら(あるいは使用許可を得て)飲食用のテーブルやイスなどの設備を設置していると、やはり10%対象となる。逆に、テーブルやイスを備えていないなら軽減税率の対象でよいので、この理屈を当てはめれば、お祭りの屋台で綿あめを買ったときは8%でいいはずだ。しかし、同じ屋台で焼きそばを売り、お客のためにと親切心でうっかりイスを置いてしまうと10%だと指摘されかねない。情けが仇になってしまうというわけだ。
よく話題になるテイクアウトとイートインで、「同じ商品なのに税率が違う問題」もややこしいが、これには新しい動きが起きている。お客のマイナスイメージを払拭するために、税込み価格を統一するチェーンが増えてきているのだ。
ファストフードでは、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、バーガーキングは、「店内での飲食」と「お持ち帰り」の税込み価格を統一するとした。しくみとしては増税になる店内飲食の本体価格を値下げすることで対応している。
他の飲食チェーンでも、「すき家」「松屋」「天丼てんや」が統一価格方針(一部商品の場合もあり)。タリーズコーヒーは本体価格表示を採用、税率は持ち帰りと店内で異なることになったが、本日のコーヒーSやカフェラテSなどの人気商品は本体価格そのものを値下げするという。10月31日までの期間限定だが、日高屋でも人気メニューの餃子(6個入り)を210円(税抜)から155円(税抜)に値下げして販売する。
こう見ていくと、外食産業への逆風は増税だけでなく、利益率も圧迫しそうだ。これらの身近な外食チェーンは所得が簡単には増えない庶民のよりどころでもあり、数円でも値上げすれば客にそっぽを向かれかねない。事業者としては、税率が10%になります、すみません、では済まないのだ。消費者としてはありがたいことだが、その結果、値下げ圧力が強まり、ますますデフレに拍車がかかりそうな気がするのは筆者だけだろうか。
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