是枝裕和が見た「映画界の労働環境」日仏の大差 有名映画監督も悩まされる「人手不足」の危機

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「(日本の)現場の労働環境はひどすぎて、もう若手が定着しない状況になっちゃっている。このままだと人手不足で難しくなると思います。変えていかないと」

海外のほうがもっと厳しいことには、ほかに“ファイナルカット”がある。監督が、誰にも口出しされることなく、自分の願うとおり編集して完成作を作っていいという権利で、ハリウッドでこれを持つのは、スティーヴン・スピルバーグ、デビッド・フィンチャー、クエンティン・タランティーノなど、超大物だけだ。

だが、是枝監督は、『真実』で、早くもそれを手にしている。ハリウッドとフランスは同じではないとは言え、最初からこれを得るのは、易しくなかったはずだ。

「(フランスで)契約書はかなり厳密。ですが、プロデューサーが頑張ってこれを契約書に入れてくれたんです」

クルーの給料は2週間ごと、週末に現金で支払うが、そういったことも、是枝監督はまったく心配しなくてよかった。

「そのあたりも全部プロデューサー。僕自身は本当にいつもどおりにやらせていただきました」

初めて海外で作品が評価されたのは1995年、デビュー作『幻の光』。同作品はベネチア映画祭でオゼッラ・ドゥオロ賞を受賞した。カンヌでも、これまでに5作品がコンペ上映されている。ヨーロッパではもちろん、ハリウッドでも業界人や批評家に名を知られる是枝監督に、現代日本を代表するフィルムメーカーとなった気持ちを聞くと、「いや、あまり代表になりたくないんですよ」と、笑いながら否定した。

外でやる人がどんどん増えてほしい

「もっとたくさんの(日本人)監督たちが表に出てきてくれれば、そう言われなくてすむので、本当に、もっと出てきてほしいです」

それは監督だけでなく、役者や関係者に対しても思うことだ。

「僕は言葉ができないので限界もありますけど、日本の監督とか、役者とか、スタッフとかに、外でやる人がどんどん増えてほしいなと。そう思うから自分もこうやっているわけで。ロスを拠点にして頑張っている日本の映画人もいますから、ゼロではないけれども、非常に少ない。日本の映画業界が国内市場だけで完結しているんですよね」

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