是枝裕和が見た「映画界の労働環境」日仏の大差 有名映画監督も悩まされる「人手不足」の危機

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その段階で、ビノシュは日本で撮影するのだろうと思っていたようだ。フランスで撮ることになったのは、ドヌーヴのキャスティングがきっかけである。

「その国の映画史をつづるような大女優というのは、アメリカではもう現役ではいないのではと思っていて、でもフランスならばカトリーヌ・ドヌーヴがいると思いついたんです。その瞬間、じゃあフランスで撮ろう、と。ビノシュの投げてきた球を、こういう形で投げ返せるな、と思いました」

製作準備は、『万引き家族』の撮影と同時進行だった。

「去年は、こっち(『真実』)の脚本を作っている間に『万引き家族』を撮影して、編集して、みたいに並行作業でした。でも、つねに2本半くらいは並行でやっているんで。ここ5年はずっとそんなペースですね」

日本の現場はひどすぎる

今作は、出演者だけでなく、プロデューサー、撮影監督、美術監督など、スタッフもすべてフランス人だ。しかし、「優秀な人はどの国の人でも優秀だし、撮影は撮影、美術は美術」なので、やりづらさはまるでなかった。唯一、大きな違いを感じたのは、労働条件、労働環境である。

「1日8時間で、土日は完全休み。そのルールの中でやる。そこは日本とずいぶん違うなと思いました。ただ、どう考えたってフランスのほうが正しい。スタッフは、夜ちゃんと家に帰って家族と飯を食え、ってこと。日本だと下手したら1日4食、現場で食べるわけだから。映画の撮影が、日常の中に存在できているんですよね。そこにはカルチャーギャップを感じました。日本は、撮影が始まると祭りになっちゃうから」

ハリウッドも組合のルールが厳しく、8時間を超えたとたんに残業代がかかる。それが続くと製作費が膨らんでいくので、時間の管理は非常に重要だ。また、前日の終業時間から、翌日の始業時間まで、どれくらい時間を空けるという規定もある。そういったルールを日本に持ち込むべきだというのは、是枝監督も感じている。

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