メルペイあと払い、「弱者搾取」を防ぐ具体策 ファッション領域でもメルカリ活用の新機能

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――与信枠は現在20万円が上限ですが、実際に付与している枠はまだ数万円単位の人がほとんどとのことです。枠が小さすぎるとメルペイが想定しているような使い方では物足りない一方で、大きすぎると「メルカリでモノを売らないと返済できない」という弱者搾取、貧乏ビジネス化しかねない気もします。

あまり一気に広げすぎないほうがいいと自分自身は思っている。これまでメルカリの「月イチ払い」機能を2年かけて運用し、どんな使われ方をするか研究してきた。メルペイのあと払いを始めてからの半年でも、今度はメルカリの中と外、両方で使ってもらうことでどう動くかをみているところだ。そういう過程を経て、信用に関するデータやナレッジがたまってきた。

「メルペイあと払い」では2020年初頭、分割払いに対応予定。登壇はメルペイの山本真人CBO(ビジネス責任者)(撮影:尾形文繁)

今度は分割で支払いを柔軟に行えるようにしたが、これを機に一気呵成にすごく高い与信枠を付与するつもりはない。利用シーンとしても、ものすごい高額品の購入というより、日常の食品・日用品よりちょっと上くらいの消費、例えば新生活に必要な家電など、そこには充足できるくらいの金額であればいいなと考えている。

少しずつでも利用者側に「使えるサービスだ」と認識してもらえれば、もっと信用が貯まるようにしていくために、メルカリでの売買における利用者の振る舞い、行動も変わっていくはずで、そうなればさらに与信枠を広げられ、いい循環が生まれると思う。でもそうした感覚を定着させるには、ある程度のサイクルが必要になるだろうと。

重要なのは、過信しすぎないこと

――時間がかかりそうですね。

まさに、社内外へのメッセージとして僕が強調しているのは「あまり急がない」ということ。収益化をこの与信ビジネスに頼ると、会社がよくない方向に引っ張られてしまうと思っている。当面はメルペイでスマホ決済の裾野を広げて、(決済手数料で)収益を安定化させる。

加えてメルカリとの連携でフリマの売買を促進し、ここの販売手数料を拡大する。これらでグループの経営を支えつつ、与信のほうは早期の収益化ではなく、算出モデルをよりよくすることに注力する。

少額の与信に新しいテクノロジーをどう活用するのか。このテーマ自体は国でも積極的に議論されているところだ。これまでの与信は人を介して行っている分、総コストが高くなり、利用者にその負担がいっている側面もあった。適法にやっていくのは大前提だが、われわれらしいサービスを作り上げ、こうした課題に挑んでいきたい。

メルカリの成長の歴史には、いい意味でも悪い意味でも、われわれが思ってもみなかった使われ方をして、その都度しっかり対処するという流れがあったのも事実。重要なのは、過信しすぎないこと。与信サービスも段階的に広げ、問題が出ればすぐに対策を打っていく。メルペイは金融事業者として、リスク管理をさらに強化していく。自分自身も、どちらかというと(事業成長を牽引するより)ブレーキをかける側に回ろうと考えている。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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