4カ月でスピード婚を果たした35歳女性の機転 成り行きに任せていても進みはしない

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疲れを感じた有紀さんは出会いの方針を転換した。独身者も多そうな趣味の場にできるだけ参加して「自然な出会い」を目指したのだ。バレーボールやバドミントンの社会人サークルをかけもちし、前夫である孝明さんに教えてもらったバイクも再開。なんと、現在の夫の一雄さんは利用したバイク店の社員である。

「バイクは基本的に男の世界なので、女の人がいきなりバイクを買いに行ったことでお店の中で話題になりました。しかも独身らしい、と(笑)。私のほうも『いい人がいたら紹介してくださいね』と言ったところ、一雄さんが独身だと教えてもらいました。イケメンじゃんと思って電話番号を聞き、私のほうから『どうですか。私とゴハンに行きませんか?』と誘ったのです」

確かに自然な出会いではあるが、成り行きに任せていたら時間だけが経過して一雄さんとの仲は深まらなかっただろう。少しでもピンと来た場合は、恥をかくことを覚悟のうえで積極性を発揮しなければならない。結婚相談所などと違って、両者の背中を押してくれる人などどこにもいないのだから。

最初のデートで、「普通にしゃべれる男の人だ。貴重!」と一雄さんを認定した有紀さん。そこから勢いはさらに増した。即座に「次も会いませんか?」と提案し、実現した2回目のデートで「私と付き合いませんか?」と告白。

一雄さんが「わかりました」と答えると、彼が1人暮らしであることを把握していたので「今日、泊まらせてくれませんか」と頼んだ。彼の家では「一緒に寝ませんか」と誘ったらしい。すばらしくわかりやすい。この展開ならば、どんなに奥手な男性でも彼女からの好意と信頼を確信するだろう。

交際を始めてからはまさにトントン拍子だった。バイク店の正社員である一雄さんは平日しか休めないこともあり、有紀さんは彼の部屋で半同棲の生活をすることにした。食事も作ってあげて、2人暮らしの喜びを高めていった。さらに、部屋の更新日が迫っていることを目ざとく見つけた有紀さんは「一緒に住みませんか」と提案。ほとんどプロポーズである。その3カ月後には婚姻届を提出した。

いずれは息子のいる環境に誰かを迎え入れたい

「結婚生活は楽しいです。まずお金の面での価値観が合いますね。お互いに無駄遣いはしないけれど投資には興味があるので、いろいろ話し合えています。『今日はこんな面白いお客さんが来た』と、仕事の話もしてくれます。私もたくさん話しますよ。前の夫からは『他人の恋愛に口を出す女は嫌いだ!』なんてキレられていましたが、今はそんなことはありません」

1年間新婚生活を楽しんだ後、かねて念願であった子作りを始めた。不妊治療を受けるつもりであることは結婚前から一雄さんに伝えてあり、顕微授精(体外受精では受精しない場合に行われる高度な治療)までやって息子を授かった。全部で300万円ほどかかった。

できれば子どもは2人欲しいと思っていた有紀さん。現在はその可能性はないとほぼ諦めているが、いずれは里子を迎えたいと思っている。本連載でも過去に取り上げた里親制度 の利用である。

「息子のいる環境に誰かを迎え入れたいと思っています。きょうだいの代わりになってくれるかもしれません。それがかなわなくても、息子には核家族ではなくいろんな人と接して育ってほしいと思っています」

30代半ば頃までは人生を模索し、何度も失敗を経験した有紀さん。立ち直り、自力で幸せをつかみ取った後も明るく前を向き続けている。

 

当連載では記事に登場してくださる「晩婚さん」(35歳以上で結婚された、結婚して5年目以内の方)を募集しています。こちらのフォームよりご応募ください。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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