アップルが動画サービスを無料で提供する理由 NetflixやAmazonが受ける計り知れない打撃

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そのカギとなるのは、Apple TVアプリの存在だ。名前がややこしいのだが、動画配信サービス「Apple TV+」は、「Apple TV」アプリ(以下、TVアプリ)内で視聴できる。

TVアプリはMac、iPhone、iPad、iPod touch、Apple TVといったデバイスのほかに、ソニーやサムスンなどの主要スマートテレビメーカーにも内蔵され、AmazonやRokuといったセットトップボックスでも利用できる。Apple製品を持っていない人も、TVアプリが利用できればストリーミングサービスのターゲットになっているのだ。

このTVアプリはApple TV+視聴のほかに、iTunes Storeを通じたコンテンツの購入・レンタル視聴、Apple TV channelsというケーブルチャンネルをストリーミングの購読管理と視聴、さらにストリーミングアプリを横断したコンテンツ検索が利用できる。

TVアプリは、いわば、多チャンネル、多ストリーミングアプリ時代に対応する「デジタル・ストリーミング時代のテレビ番組表」として、唯一の存在といえるのだ。

アップルが描く「未来のテレビ」

アップルの狙いは、あらゆる人々がTVアプリを通じて映像を発見して楽しむ未来であり、アプリの購読課金の手数料収入をビジネスモデルとして設定している。

そもそもアップルはTVアプリの思想から、1つのストリーミングサービスだけしか購読しない未来を描いておらず、複数のサービスを組み合わせながら楽しむためのインターフェースを、TVアプリで用意したのだ。

そこから考えれば、アップルが月額10ドルのサービスを提供するのは高すぎるし、実質的に無料で提供しても、TVアプリに人が集まってくればいい、と考える戦略が浮かんでくる。

アップルはテレビ放送からストリーミングへ、人々の映像体験を転換させようとしている。これには時間がかかるし、国ごとに異なる事情を吸収しながら進めなけばならない。しかし得られる果実は実に大きく、じっくり取り組める体力(=手元資金)があるアップルだからこそ、描ける未来といえる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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