アップルが動画サービスを無料で提供する理由 NetflixやAmazonが受ける計り知れない打撃
映像コンテンツ最大のプレイヤーであるディズニーは、アメリカではApple TV+と同様に11月にサービスがスタートする「Disney+」が月額6.99ドルという意欲的な価格を設定した。
ディズニーはマーベルや20世紀FOXなどを傘下に収めており、『スター・ウォーズ』から『アベンジャーズ』までを手中に置くサービスを提供する。しかもやはり傘下であるスポーツチャンネルESPNや、動画配信サービスのHuluまでバンドルするオプションを用意し、勝負に挑む。前述の付加価値の中で最大のものとなるコンテンツの充実度からすれば、ほかのサービスが対抗するのは難しい。
ディズニーが6.99ドルに設定した経緯からすると、アップルとしても、それを超える価格設定を行うことは難しい状況だった。すべてオリジナルでコンテンツ数が当初は少ないアップルが、5ドル以下の水準に価格設定を行うことは、想像にかたくないことだったのだ。
実質「無料」で見られる
しかし、さらに驚くべき発表をした。アップルはApple TV+について、Appleデバイスを購入すれば、1年間無料で視聴できることを明らかにしたのだ。
iPhone、iPad、Mac、iPod touch、Apple TVといった対応製品の購入で無料になることを考えると、家族のメンバーが2人以上いれば、ずっと無料で視聴し続けられる可能性すらあるのだ。
例えば、2019年は長男がiPhoneを買い替えて、1年間無料になる。2020年はお母さんがiPadを手に入れて1年間無料になる……といったぐあいで、家族のメンバーの誰かが、なにかを買えば1年間の視聴がバンドルされてくることになる。
こうして、Appleプラットフォームに囲い込まれている家族は、実質的には無料で、サービスを利用し続けられる仕組みとなった。
筆者は3月のイベントの際にも感じ、また指摘してきたが、アップルはApple TV+が動画配信サービスのトップを取る必要がない、と初めから考えているはずだ。
前述のように、動画配信サービスの最大の競争差別化要因はコンテンツで、Apple TV+はすべてオリジナルでスタートすることから、そもそも当初から対抗できるわけがない。しかもAppleデバイス購入にバンドルすることから、月額料金をあらゆるユーザーから徴収するというビジネスに持ち込もうとするわけでもない。
そのため、ほかの意味合いを持たせている可能性を探るべきだ。
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