NYの「意識高い中華料理店」が大炎上したワケ 意識せず使った英単語が爆弾になった

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これまで本連載を通して解説してきたが、ポリティカル・コレクトネスとは簡単に言えば、自分とは人種や性別や文化背景が異なる相手に対して、“社会的に公平な言葉や表現で接すること”である。

今回のラッキーリーズの1件では、それが意図的ではなかったとしても、中国人ではない異人種の人が「伝統的な中華料理よりも自分が提供する中華料理のほうが優れている」と言ったようにも受け取れる発言は、中国系アメリカ人を中心とする大勢の人たちの気持ちを傷つけ、ポリコレを無視したものだと認識されてしまった。

「よかれと思って言ったこと」が問題に

これが中華料理ではなく和食で、コメの代わりにカリフラワーで作られたおにぎりや炊き込みご飯を、「新しい和食です。伝統的な和食よりも、ずっとヘルシーで美味しい」と告知する白人シェフの和食店を目にしたら、複雑な気分になる日本人は多いだろう。

このヘルシーで斬新な中華料理店ケースでは、「クリーン」と「ヘルシー」いう英単語が「配慮なき言動」だと言われる引き金になったが、英単語の意味は1つではないことに留意して、日本でも外国人用のキャッチコピーやメニュー、ウェブサイトやSNSの文章を書かないと、こういう思いもよらない炎上を引き起こす可能性があるという1例だろう。

ポリコレを配慮して行動することの最も難しい点は、各人の価値観が異なることだ。ある人が「よかれと思って言ったこと」が、ある人を深く傷つけるということは、同人種や同じ文化背景の人たちの間でも頻繁に起こる。ほとんどの人は「わざわざ知らない誰かを傷つけようとして何かを発言する」ことはないだろうし、以前ならば、たとえそういう問題が起きても個人間で解決することができた。

しかし現代はSNSの時代だ。小さな誤解が、SNSの力で予想以上のものになってしまう。だからこそ、欧米の企業や団体では「SNSで炎上しがちなポリコレ問題」について、文化的・歴史的背景の情報共有や問題を未然に防ぐためのシミュレーションが行われているのである。

例えば日本では、それほど親しい間柄でなくても「他人の体型や、体型の変化についてコメントする人」が多いが、グローバルスタンダード的には、そういう発言は控えたほうが安全だ。体型は人種によって基準がさまざまなだけでなく、諸外国ではその指摘は「極めて個人的なこと」だと受け取る人が多いからである。

この「極めて個人的なこと」に立ち入って失敗したのが、アメリカの消費財大手ユニリーバである。

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