年金制度を見直す仕組みの歴史を知ってますか 財政検証後に開かれる年金部会が重要なワケ
2013年8月にまとめられた『社会保障制度改革国民会議報告書』では、年金部分の最後を次の文で締めています。
ここで、国民会議報告書が「上記に示した課題」とは、
(1) マクロ経済スライドの見直し
将来の保険料負担水準を固定した以上、早期に年金水準の調整を進めた方が、将来の受給者の給付水準を相対的に高く維持することができる。このため、マクロ経済スライドについては、仮に将来再びデフレの状況が生じたとしても、年金水準の調整を計画的に進める観点から、検討を行うことが必要である。
(2) 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
国民年金被保険者の中に被用者性を有する被保険者が増加していることが、本来被用者として必要な給付が保障されない、保険料が納められないというゆがみを生じさせている。このような認識に立って、被用者保険の適用拡大を進めていくことは、制度体系の選択の如何にかかわらず必要なことである。
(3) 高齢期の就労と年金受給の在り方
世界に目を向けると、高齢化の進行や平均寿命の伸長に伴って、就労期間を伸ばし、より長く保険料を拠出してもらうことを通じて年金水準の確保を図る改革が多くの先進諸国で取り組まれている。
(4) 高所得者の年金給付の見直し
マクロ経済スライドの発動による年金水準の調整は、中長期にわたって世代間の給付と負担のバランスを図ることを通じて、年金制度の持続可能性を高めるものといえる。このことを考慮すると、今後は、年金制度における世代内の再分配機能を強化していくことが求められる。
これら『社会保障制度改革国民会議報告書』の文言を受けてプログラム法(2013年12月5日成立、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)が成立、このプログラム法に基づいて、2014年財政検証でオプション試算Ⅰ~Ⅲが行われました。
こうした一連の流れを要約すると、2009年財政検証で、このままでは将来の「給付の十分性」に支障を来すという問題が可視化され、その対策として打つべき手段を試算を行って可視化したのが2014年財政検証の3つのオプション試算だったわけです。
PDCAサイクルで回す制度改革
ここで、公的年金保険制度は見直しながら運営していくという、PDCAサイクルに入ったことになります。Checkは財政検証、それに基づいた改革がActionですね。
2014年財政検証の本体試算は、なにもしなければこうなるという絵柄を示しており、本体試算を補完するものとしてなされた3つのオプション試算では、この方向で年金改革を進めるといずれも給付水準の底上げにプラスに働くことが、特に基礎年金に対して大きな効果があることが確認されました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら