年金制度を見直す仕組みの歴史を知ってますか 財政検証後に開かれる年金部会が重要なワケ

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ところが、2014年財政検証のときは、6月の財政検証報告の後に、18回も開かれています。そして実際のところ、今回の令和元年財政検証の後も、僕たち年金部会の委員たちは、12月末まで毎月2回から3回の日程確保を頼まれています。

財政検証の後に一度も年金部会が開催されなかった2009年の財政検証と18回も開催された2014年の財政検証の間で、いったい何が起こったのかわかりますか?

いや、わかるはずないですね。

この間の変化を理解するためには、2013年の社会保障制度改革国民会議の働きを押さえておかなければなりません。

財政検証後の年金部会こそが勝負

財政検証という公的年金保険の健康診断によって、遠い将来での病気の兆候が観察されれば、将来から振り返って現在なすべきことを考える「バックキャスティング」な観点に立って、今から改善を図る努力に取りかかることは当然のことです。

その意味で、2009年に行われた第1回財政検証では、僕が2012年の座談会で言っているように「平成21年に最初の財政検証が行われました。そのとき、デフレ下で給付をカットできないのは制度の致命傷になり得るということと、このままでは、基礎年金にマクロ経済スライドが効きすぎることになるという2つの診断結果が明示されました」(「年金実務2000号記念座談会 年金制度の過去、現在と未来」『年金実務』第2000号2012年7月9日号)と、日本の公的年金が抱える病気は、かなりはっきりと可視化されていました。

ところが、2009年財政検証の直後に政権交代があったこともあって、ほとんど何もできずに、月日はただいたずらに過ぎてしまっていました。そこで2009年第1回財政検証の轍を踏まないように、2013年の社会保障制度改革国民会議が動くことになったんですね。そこからの流れは、次の図のようにまとめることができます。

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