年金制度を見直す仕組みの歴史を知ってますか

財政検証後に開かれる年金部会が重要なワケ

とは言っても、法律を改正して制度を動かすというのはなかなか大変なことです。将来世代のためにマクロ経済スライドの見直しを行いましょうと言っても、それは年金受給世代の利害と対立します。短時間労働者に厚生年金を適用して彼らの高齢期の貧困リスクを緩和しましょうと言っても、そうなると事業主負担分の保険料が増える企業は死に物狂いで反対します。

そうした局面では、企業に対して社会全体の長期視点に立って協力をというような説得などはなんの役にも立ちません。被保険者期間の延長を行えば基礎年金の給付水準はこんなに上がるじゃないかと示しても、基礎年金には国庫負担が入っているために、追加的にどのようにしてその国庫負担を確保するかという大問題が生じます。

衝突する利害関係者たちに代わって議論するのが国会議員さんたちなのですが、中には、次の選挙という就職活動に汲々として、正義、正論などかまっていられるかというなりふり構わずという人たちも――とくに野党には大勢いるようも見えます。

大方いつもそうしたぐしゃぐしゃの状況の中で行われる改革というものは、最大願望として想定されていた改革を100点満点とすれば、実際に行われるのは、100点からはほど遠いものになってしまうとも言えます。そのあたりは、「『平成28年』年金改革に寄せて」をご笑覧ください。

年金部会は国民的議論を喚起する場

年金改革を取り巻く、利害衝突者たちの調整を図るために、今後、年金部会という公の場で議論することにより、いわゆる国民的議論を喚起し、「正確な情報に基づく健全な世論」というものをいかにして形成していくかという試行錯誤の作業が、先日の財政検証発表のその日から始まり、この作業は年金改革法案の提出まで、この国で行われることになるわけです。といっても、決めるのは政治です。

今回の財政検証でも示されたように、将来世代の貧困層を緩和するために短時間労働者に厚生年金の適用拡大を図るというのが、来年国会に提出される年金改革法案の最大の目標です。しかし、この問題、これまで何度もチャレンジしては経済界に繰り返し大敗してきた難問なんですね。今後来年に向けて、どのような展開になっていくのか、最終的に政治はどのような決着をつけるのか、関心をもって眺めておいてもらえればと思います。

さてさて、僕はずっと、記者たちに、本体試算を報道しても、そんな未来は到来しないんだから意味がないよ、オプション試算こそが重要であり、この国にはオプション試算が実現しない未来はないんだよっと言い続けてきたわけですけど、その意味を少しはわかってもらえたでしょうか。

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