退職金の所得控除をめぐって税制改正が浮上 転職者と非転職者で大きな手取り格差が存在
1月22日に召集された通常国会に提出される2018年度税制改正関連法案。目玉の1つは、所得控除における多様な働き方への対応だ。会社に所属せずフリーランスで働く人が増えたり、デジタルエコノミーの進展で働き方が多様化していたりすることが背景にある。
具体的には、働き方の違いによる所得控除額の差を縮小させるため、額が手厚くなっているサラリーマン向けの給与所得控除を一律10万円減額し、同時に誰もが受けられる基礎控除を10万円増額するという内容だ。
今後俎上に載ってくる退職一時金の控除制度見直しも、多様な働き方への対応という流れの中に位置づけられる。昨年11月に公表された政府税制調査会の中間報告書に「退職所得控除は勤続期間が20年を超えると控除額が急増する仕組みになっていることが、転職に対して中立的ではなく、働き方の多様化を想定していないとの指摘がある」との一文が加えられた。
日本の終身雇用慣行が縮小し転職が一般的になる中で、現行制度は転職者に不利な内容となっており、これを解消するというわけだ。
現行では勤続20年超で1年当たり控除額が増加
具体的に見ていこう。
現在の税制では、退職一時金は退職所得としてカウントされ、給与所得や不動産所得、雑所得などとは合算されず個別に所得税の税率が適用される(分離課税方式)。退職一時金は、過去の勤務に対する賃金の後払いという性格を持つため、税額の低くなるような優遇措置が取られている。
同様の理由で、控除が手厚いのも特徴だ。勤続20年以下では、40万円×勤続年数が退職所得控除額となる。さらに勤続20年超の人は、20年を超える部分について70万円×勤続年数が退職所得控除額となる仕組み。実際の課税対象となる退職所得は、退職一時金からこの控除額を引いた後の額の1/2だ。
20年を超える部分の控除額が増額されているのは、長年の勤続に対する報償的意味合いが強い。終身雇用慣行の中で培われたものといえるだろう。だがこれは言うまでもなく、1つの会社に居続けたほうが退職一時金の手取りが有利になることを意味する。働き方が多様化する中で、転職に対するインセンティブをそぐ形になっている。
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