退職金の所得控除をめぐって税制改正が浮上 転職者と非転職者で大きな手取り格差が存在
たとえば、共に計2500万円の退職一時金を受け取ったが、Aさんは1つの会社に38年間勤続、Bさんは複数の会社に38年間勤続して1社当たり20年未満の勤続だったとしよう。その場合、両者の退職所得は以下のようになる(利子の影響などは捨象。経団連・東京経営者協会「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、勤続38年<60歳>の大学卒標準退職金は2374万円)。
Aさんの退職所得
{2500万円-(40万円×20年+70万円×18年)}×1/2=220万円
Bさんの退職所得
{2500万円-(40万円×38年)}×1/2=490万円
このとき、Aさんの退職所得220万円には累進税率で最高10%が適用され、所得税額12万2500円。Bさんの退職所得490万円には最高20%がの税率が適用され、所得税額55万2500万円となる。
これに一律10%の税率が適用される住民税、2.1%の復興特別所得税を加えると、Aさんの税額合計は38万8700円、Bさんでは実に114万5400円となる。AさんとBさんの違いは転職したかしなかったかだけの違いであり、同じ38年勤続で計2500万円の退職一時金を受け取ったにもかかわらず、手取り額には75万6700円も差がつく計算だ。
どのような見直し内容となるだろうか。財務省主税局担当者は「単純に勤続20年超の部分の控除額も1年当たり40万円に合わせるというやり方にはならないだろう。勤続年数に応じて控除額を計算する方法を変えることもありうる」と話す。
金融所得課税の見直しも浮上
勤続20年超の優遇部分を見直すのは当然だが、単にそれを剥がすだけだと、退職所得全体や、1つの会社に勤続20年超の人にとっては増税になってしまう。そうならないように、勤続1年当たりの金額を現行の40万円と70万円との中間的金額に一本化すれば、1つの会社に勤続20年以下の人にとっては減税になる可能性がある。いずれにしろ、今後の制度設計の議論に注目だ。
2019年度以降の税制改革では、富裕層優遇との批判が強い金融所得課税(分離課税)の見直しも浮上する見通しだ。一般の人々の老後資産形成を対象とした税優遇制度(NISA<少額投資非課税制度>など)を拡充する一方、金融所得課税の税率を現在の20%から25~30%に引き上げることが政府内でささやかれている。
退職一時金の所得控除見直しは、こうした制度改正と歩調を合わせて進む見通し。公的年金を補完する老後の生活資金をめぐって、税制改正が相次ぐ格好だ。
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