車離れもたばこ不振も、全部スマホのせいだ スマホが奪った「異業種」のパイ

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3つめは、スマホと「可処分所得の取り合いになった」ケース。ここ数年、サラリーマンのランチ代が下がっていたと言われている。

昔はランチに700〜800円使っていたが、それが吉野家やサイゼリア、コンビニなどでワンコインで済ませるようになった。その差額はスマホの端末代、通信代、さらにはアプリやゲームに思わず課金してしまうおカネに利用されているのではないかと思われる。ユニクロやH&Mなどのファストファッションがはやったのも、スマホがハイブランドの洋服に費やしていたおカネを奪ったからかもしれない。

一説にはクルマ離れもそうだと言われている。若者の入門的なクルマ、一般的には新車で180万円程度のクルマを買って自動車ローンを組むと、毎月およそ8000円以上は支払わなくてはいけない。その金額は、毎月のスマホ利用料金とちょうど同じぐらいか、むしろスマホの利用料金のほうが高いくらいになる。使えるおカネの限りがある中で、「それだったらクルマはいらない」となる人もいるかもしれない。価格帯が大きく異なる意外な業種の商品も、競合になりうるのだ。時間は24時間、所得は収入次第だが、いずれにしても「有限」であることに変わりはないのだ。

今こそ、商品の「本質的な価値」を再考するとき

だからといって「うちの商品が売れないのは、全部スマホのせいだったのか……」と考えるのは早計であろう。小山氏は「売れない理由は、別にスマホが登場したから、ではない」と強く指摘する。

たとえば、たばこ。確かに「暇潰し」のお供というポジションをスマホに奪われた側面もあるかもしれないが、世間的な分煙の動きや健康志向の影響は、もっと大きいだろう。たばこに使うおカネをスマホに奪われた面はあるだろうが、それはスマホが出てきたからではなく、有限のおカネを予算組みする際に、さまざまな理由によっておカネを使う「優先順位」を落とされたのである(スマホが最後の「ひと押し」になった可能性はもちろんある)。クルマだってそうだ。

可処分所得をスマホと奪い合っているという見方もあるが、レンタカーやカーシェアなどの選択肢が浸透していることは、必要なときに借りればいい、というライフスタイルの中で、クルマの購入を遠ざけている。

つまり、わざわざ「所有」しないといけない理由が薄れたものから、消費者のウィッシュリストの中で優先順位を下げられている。

どこもかしこもWi-Fiスポットを設置したからといって、スマホアプリでクーポンを配布したからといって、顧客が戻ってくるのか。そうではないだろう。消費者が所有すべき理由、それがスマホやそのほかの理由を超えられるか。逆に言えば、企業はその理由=価値を作ることを求められている。スマホは、「提供する商品の本質的な価値とはなにか」を、ビジネスパーソン全員に問いかけている。

岡 徳之 ライター Noriyuki Oka Tokyo 代表取締役

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おか のりゆき

1986 年長崎県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、PR 会社ビルコムで2 年4 ヶ月勤務。2011 年8 月に企業PR・ウェブ企画開発・編集ライティングを専門分野として開業。現在はシンガポールを拠点に事業運営に携わる。国内大手企業のウェブプロモーション業務に従事する傍ら、CNET Japan やITmedia など国内の有力ニュースサイトを中心に10 数媒体で執筆を担当。ライターとしての専門領域はIT・ビジネス・マーケティング・クリエイティブ・ライフ・グルメ・人物インタビューなど多岐に渡る。事業会社が運営する自社メディアでの編集ライティング案件にも携わる。異なる専門領域を持つフリーライターと連係し、編集プロダクション的機能も果たす。

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