「アベノミクスって、いったい何?」と聞かれたとき、あなたはきちんと答えられますか?
今回は、わかったようでわからないアベノミクスについて、今話題の『図解 90分でわかる! 日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門』の著者である第一生命経済研究所主席エコノミスト・永濱利廣さんに本の内容とともに、アベノミクスについて聞いてみました。
きっかけは『男性不況』から
まず、この本をお書きになった理由から教えてください。
まえがきにも理由を書いたのですが、そこに書いてないことからお話ししましょう。
昨年(2012年)11月に『男性不況』(東洋経済新報社)という本を出しました。その中で、今の不況は「労働市場における男性の価値の低下」ということを私は指摘したのですが、この「男性不況」を克服するためには、個人個人でやらなければならないこともある一方で、マクロでやらなければならないことがあると述べました。
それは、男性があぶれないように経済のパイの拡大が必要だということです。実は男性不況はアメリカにもあったことで、アメリカはそれを克服しようとして、それなりにうまくいっている政策を行っています。この政策を日本でも見習ってやるべきだと、私は『男性不況』の中で主張しました。
ところが、この本を出したあとに出てきたアベノミクスが、まさに私の主張していることと非常に近い政策だったのです。
実のところ、アベノミクスはそれほど目新しい政策ではありません。今までいろいろな人が、こうしたほうがいいと言っているのに、なかなか政府や日銀が切り込めなかったことを実際に踏み込んだところに大きなポイントがあると思います。
アベノミクスが出てから、私はよくメディアに出させていただいて、アベノミクスの解説をすることが多かったのですけど、よくわかっていない人や、誤解をしているメディアが非常に多かったのです。そこで、これはなんとかしないといけないと思ったのが、この本を書いた理由の一つです。
アベノミクスへの誤解とは、どんなものだったのですか?
たとえば、一番わかりやすい例でいえば、「アベノミクスによって物価ばかり上がり、賃金は上がらないのではないか」とか、「最近の値上げはアベノミクスが出てきたせい」などと言われることがあるのですが、最近の値上がりの理由は、アベノミクスによる円安が主因ではありません。
実際には円安以外のことが主因になっているのに、メディアはそうやって書きたいのか、せっかくいい政策を行っているのに、批判的に報道しています。特にテレビや雑誌では多いですね。
デフレ脱却のためには物価が上がっていくということですね?
そうなのですが、今の値上げは悪といえます。賃金が上がって、自然にモノの値段が上がるのはいいのですけれど、今はまだ賃金が上がっていない状態で値上げをするというのはいい値上げではありません。また、賃金が上がってこないと、安定的な物価上昇にはなりません。
本の中には、2015年頃には給料が上がっていくということですけれど……。
はい。でも、みんなの賃金が上がるわけではありません。平均として給与が上がるということになります。今年は、残業代とか、非正規労働者の賃金が上がり、来年になると会社員のボーナスが増え、正規労働者の雇用や新卒採用も増えてくるでしょう。そして、ようやく再来年くらいになると、基本給が上がってくるということになると思います。