日本経済復活のカギはデフレ脱却
アベノミクスの目的はデフレ脱却にあるといわれていますが……。
そもそもデフレ脱却がなぜ必要かというと、最終目標は財政健全化なのです。では財政健全化のために何が必要かというと、一つは基礎的財政収支を黒字化すること、もう一つは名目成長率が長期金利を上回る関係を作ることです。
金利がマイナスになることはありませんから、デフレの世の中だと、名目成長率が金利を下回ってしまうことになり、今までそういう状況があったからこそ、ずっと日本の財政が悪くなっていたわけです。
専門家の中にもデフレでもいいという意見がありますが、そういう意見は財政のことを見落としています。たしかに、アベノミクスがうまく成功してインフレ経済になってくると、貯蓄を持っていない年金暮らしのお年寄りなどは苦しくなってくることがあると思います。
でも、一方で経済のパイが拡大すれば税収が増えますし、社会保障の効率化なども進めると同時に、本当に苦しい人たちの社会保障を充実することで対処できると思います。でも、パイが拡大しないと何も始まりません。
デフレを脱却しないと、日本は困るのでしょうか?
デフレ経済ではお金の価値が上がっていくわけですから、現金を抱えて、できるだけ節約する生活がいちばん合理的なのですが、マクロ経済で考えると、お金が動かないと経済は停滞してしまうわけなので、結局お金を貯め込んでいた人も含めて、みんなが日本経済とともに衰退していってしまいます。
それを、安倍首相も言っていましたが、頑張った人が報われる世の中にしたいということですよね。それがデフレからの脱却です。デフレを脱却すると、お金の価値自体は下がっていきますが、働く機会がたくさん増えて、世の中全体がうるおっていきます。そこがポイントだと思います。
アベノミクスで、デフレ脱却まではいくと思います。デフレ脱却とは、経済の潜在的な実力よりも、実際の経済が低いからこそデフレであって、潜在水準まで経済を引き上げていくというのが、3本の矢のアベノミクスです。でも、そこまでいったら、次は潜在水準を引き上げなくてはなりません。そしてそこまでいくには、社会保障などを含めて新たな改革が必要となってきます。それはまた安倍政権の別の課題になっていくでしょう。
3年後にデフレを脱却している可能性はかなり高いですか?
達成している可能性のほうが高いと思います。その可能性は6割くらいです。逆にいうと、4割くらいは失敗する可能性があるということです。
たとえば、新たに大型補正予算を組むなどして、国債を増発し続けたら大変なことになります。機動的な財政支出はいいですが、持続的な財政支出を続けたら、国債市場が暴落するというようなリスクを含んでますから。
それはどのあたりがターニングポイントなんでしょうか?
来年ですね。たぶん消費税の増税をする頃には、今期組んだ大型補正予算の効果が減ってきます。その頃に追加の補正予算とか言い始めると危ないです。
1本目の矢をしっかりと打たないことには、3本目の矢をいくらやっても、デフレからは脱却できません。1本目の矢が一番重要です。1本目の矢を失敗させないために、2本目の矢はできるだけ規律を持ってやらなくてはいけません。そして1本目の矢の効果をアメリカ並みに出すためには、3本目の矢が必要だという位置づけであるというのが、私の考えです。