「いないいないばあっ!」が中国で大人気のワケ アジア各国に「輸出」され、人気を博している
そんな努力のかいあって、放送開始から2年が過ぎたベトナムや中国では、現地スタッフが制作したパッケージを、日本でチェックするだけで放送できるほど、クオリティーが高い番組が出来上がるようになってきた。遠足のお弁当箱がバインミーだったり、お月見団子が月餅だったり、ミャンマーの寺院でお参りをしたりと、文化や生活習慣の違いが見られるのも楽しい。
「日本では宗教色は通常出さないのですが、ミャンマーではお参りが日常。そこは外せなかったですね。ただ、犬は寺院に入れないので、ワンワンは正装して、お寺の前にいる設定です(笑)」(奥富)
「違いがあるのは面白いですよね。それに、いないいないばぁ遊びは万国共通。子どもたちが面白いと思う感覚はどこも同じだということも発見できました」(鈴木)
「海賊版」ではなく本物を! アジアの教育熱
視聴者の反応は好調で、ベトナム、中国ともに、各局上位の視聴率を得ている。さらに中国では公式グッズの売れ行きもよく、ファンミーティングや有料のステージショーにも親子連れが集まると言う。
「とくに上海は教育熱心な家庭が多く、子どもの教育にお金や時間をかけようという世帯が多いですね。海賊版ではなく良質な本物を与えたい思いが強いようです」と鈴木氏が言うように、中国だけでなく、ベトナム、ミャンマーでも子どもへの早期教育の期待が高まっている。だからこそこうした幼児番組がうけるのだが、一歩間違えると親は番組に過度な知育要素を求める傾向があり、それが悩みの種だと言う。
「この番組は決して上から教え込む番組ではないんです。例えば、ワンワンに『さあ、歯磨きしましょう』『手を洗おうね』とストレートに言わせるのは違う。ワンワンは先生じゃないですからね。子どもと同じように、遊びや失敗を通して一緒に学んでいくというコンセプトを、制作側に理解してもらうのは難しいですね」(奥富)
数字や文字学習などの知育的要素を番組に入れれば、確かに親世代は喜ぶだろう。だがEテレがこの番組を通して世界で共有したいのは、知識よりも自然や家族を愛する情緒や、友達と過ごす喜びや豊かさ。つまり、子どもが本来求める楽しく幸せな世界観そのものだ。
「やっぱり子どもたちは最初からわかってくれているんです。とくに、赤ちゃんは音や映像の質が高ければ興味を持ってくれる。それは、私たちが今、外国版を見て感じることでもあります。外国語で説明が続くと退屈だけど、音楽や映像が楽しいと飽きない。海外制作を通して、改めて赤ちゃんの気持ちになることや、言葉に頼らず表現を磨く大切さを学んだ気がします」(鈴木)
作り手である大人たちが、かつてのワクワクを忘れないこと。それがこの番組が世界に受け入れられている理由だった。
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