「ガンダム」安彦作品が描き出す人間たちの実像 アニメ文化はアジアを救うカギとなる
中島:今の「一帯一路」というのは、基本的には中国の大日本帝国化です。そういう後継的残滓っていうものが、ある種の拡張主義。日本はやっぱりそれをやってきた側として、同根の問題がそこに存在するのだ、と言い続ける必要があると思うんです。
アジア主義の1つの可能性を挙げるなら、僕はやっぱりEUって大成功だと思っているんですよ。巨視的な時代から見て、こんなにヨーロッパが安定している時代なんてもうなかったんだと思うんですね。近代以降。少なくともこの500年ぐらい。
イギリスのEU離脱が起きたり、ギリシャで財政不安が起きたりすると、「あ、EU終わった」とか言われますね。確かに連邦国家にはもうならないし、ほころびが生まれているというのは、そのとおりなんですけども、EUって中小国家の連合体なので、もはや外交はEUがないと成り立たないんですね。例えばノルウェーとかデンマークにとっては、EUがなかったら外交できない。
とすると連邦国家でもないけど、バラバラな国民国家でもない、よくわかんないものが安定的に続いている。もちろん移民問題とかあるんだけれども、フランスとドイツという憎しみ合った国が七十数年間まったく戦争していないように、巨視的に見るとすごく安定している。EUと同じような状況がアジアにできれば僕はそれでいいと思っています。
じゃあ、なんでEUはこんな安定しているかっていうと、やっぱりこの70年の間にしっかり話をしてきたというのが大きくて、1個物事を取り決めするのでも相当な時間を要したわけですね。そうして話している間に人間的な関係性が生まれてくると。
これからのアジア
杉田:今、日本と韓国の間で政治的対立が続いていますが、ここでも話し合いを続けていくことの意義を感じます。
中島:この70年間、ヨーロッパがやってきたようなラウンドテーブルを、アジアでも持つべきだと思います。ヨーロッパのように、キリスト教という土台がないような場所で、アジア的なものを提示するのはそう簡単ではないけれども。
私が『アジア主義』で書きたかったのは、近代にどう対応するのかをめぐって、いろいろ人がうごめき合って、その中で友情をつくりながら、あるいは離反しながら、つくられたアジアという像でした。そういうものを私自身がもう1回拾い上げたかった。